2016 Fiscal Year Research-status Report
医薬品開発における安全かつ臨床用量探索可能なFIH試験での初回用量設定法の開発
Project/Area Number |
15K08110
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
山田 安彦 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40158225)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 用量設定 / 薬物動態学 / 薬力学 / FIH |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品開発における臨床第Ⅰ相試験は、初めてヒトに投与する(First In Human ; FIH)試験であるため、特に安全性を確保した投与量の設定が求められている。申請者はこれまで、医薬品の臨床における効果や副作用を理論的に解析するための方法論として、標的分子結合占有理論を確立し、医薬品の適正使用に応用してきた。そこで、本研究では、本理論をFIH試験の投与量設定に適用し、医薬品開発におけるFIH試験での安全かつ臨床用量探索可能な用量設定法の開発を目的とする。 平成27年度においては、医薬品の臨床用量投与時の標的分子への至適結合占有率(Φ)の評価を行い、アンタゴニストは約80%、アゴニストは10%以下であることを見いだした。さらに、この値は、薬効群間で異なっており、用量設定には臨床効果とΦの関係を加味する必要があることを明らかにした。 平成28年度は、生体維持に必要な分子を標的とする医薬品と、分子標的抗悪性腫瘍薬のように腫瘍増殖の特異的分子を標的とするものの場合、常用量投与時の標的分子へのΦは異なると考え、さらに検討を加えた。その結果、分子標的抗悪性腫瘍薬においては、その種類にかかわらず、Φはほぼ100%であることを明らかにした。一方、医薬品の用量に人種差が存在するものがあり、海外導入医薬品の開発を考える際にはその用量差の原因を明らかにしておくことが不可欠であるため、日本と米国における新医薬品を対象に検討を行った。その結果、日米で用量が異なる医薬品は3割あり、米国の方が高く設定されている医薬品はその約2/3、日本の方が高く設定されているのはその約1/3であった。そして、用量の差を薬物動態学的に説明できる医薬品は約8割であり、残りの約2割は薬力学の差が関与していることを明らかにし、FIH試験に加味する必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28 年度においては、医薬品の臨床用量投与時の標的分子への至適結合占有率(Φ)の評価を9割終了し、アゴニストおよびアンタゴニストで大きく相違すること、同種同効薬では同等であるが薬効群間で異なること、作用機序を加味する必要があることを明らかにした。さらに、医薬品の臨床用量には、人種差が存在するが、米国と比べて日本の方が高く設定されている医薬品は約1/3、原因の8割が薬物動態学で2割が薬力学に関係することを示し、薬力学的特徴をFIH試験において考慮する必要性を示唆した。後者に関しては作業を終了し、学会発表を行い、論文を作成し現在投稿中である。 以上より、全体的な進捗状況としては、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については、当初の計画に基づき、医薬品の臨床用量投与時の標的分子への至適結合占有率の評価、既開発医薬品におけるFIH 試験での投与量の評価、および医薬品の臨床用量範囲内での投与における副作用とその副作用発現に関与する標的分子への結合占有率の関係の評価について、段階的にかつ着実に実施する。そして、これらの検討から得られる知見を統合することにより、医薬品開発におけるFIH 試験での適切かつ安全な用量設定法の開発を行う予定である。
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Causes of Carryover |
データ解析に関わる物品費が、当初の予定と異なり、若干の残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費等に組み込んで使用する予定である。
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Research Products
(1 results)