2016 Fiscal Year Research-status Report
成長軟骨板に依存する長管骨発生プロセスの理解 : 組織系譜解析によるアプローチ
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15K08136
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
原口 竜摩 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (00423690)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Genetic Lineage Tracing / 成長軟骨板 / ヘッジホッグ |
Outline of Annual Research Achievements |
成長軟骨板の増殖・分化および骨置換によって、骨格系の大部分を占める長管骨は発達する。従来の研究は、初期胚子の未分化間葉細胞の凝集から軟骨細胞の分化・成熟に至る成長軟骨板そのものの発生過程に主眼が置かれ、その後の発育期での骨化プロセスについては未だ不明な点が多い。骨短縮・骨変形を特徴とする成長板早期閉鎖症や発育期成長板障害による骨形成不全など、長管骨の発達は成長軟骨板に強く依存するとされ、成長板と骨形成プロセスとを結びつける分子実体の解明が望まれてきた。申請者は、個体発生に必須のシグナル系であるヘッジホッグ(Hh)シグナルが活性化された細胞を、Genetic Lineage Tracing (GLT) 法によってレポーター標識し、マウス生体内で長期的に観察できるシステムを構築した。 成長軟骨板周辺では、Hhリガンドの発現による同シグナル経路の活性化が予想されるが、GLT法によりHhシグナルを受容した細胞をレポーター分子で可視化した申請者の研究で、成長板軟骨基質辺縁の細胞のみがHhシグナルに応答することを明らかにした。また、それらの細胞を長期的に追跡することで、成長板由来のHhシグナル受容細胞が骨基質の支持細胞へ最終的に分化することも、現在明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hhシグナルの直接標的Gli1のプロモーター依存的にCreを発現するマウスを用いたGLTを実施した。レポーター標識されたHhシグナル受容細胞の組織分布解析及び分化マーカー抗体を用いた細胞特性解析をおこない、成長板由来のHhシグナルと骨伸長プロセスとの関連性を検討した。Hhシグナルの受容を示すレポーター陽性細胞の多くは、成長板軟骨の辺縁部に局在していた。各種分化マーカーによる多重染色の結果、それらは骨芽細胞系列の細胞特性(Osterix及びRunx2陽性)を有することがわかった。さらに成長板周囲のレポーター陽性細胞は、標識後も、その数を増加させながら長管骨内部に長期的に存在・拡散していき、骨芽細胞及び骨細胞などの骨形成細胞へと分化することが判明した。またその一方で、骨髄中の血管周囲には、骨形成細胞とは異なる、特有の長い細胞突起を有したレポーター陽性細胞も点在しており、それらの多くが骨髄造血幹細胞ニッチとされるCAR細胞の特異的マーカー(Foxc1)を発現していることも分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
組織系譜解析により、軟骨細胞由来のHhシグナルが直接的に作用するのは、強いStemness特性を有し、かつ、骨組織を構築する骨形成細胞あるいは骨髄中の造血機能を支えるCAR細胞などへとコミットする能力を持った骨端軟骨直下に存在する細胞集団であることが示された。これまで成長板の軟骨細胞は、主に将来骨へと置換される軟骨成長板の発生源として考えられてきたが、それ以外にも、長管骨における骨形成や造血への関与が推察される骨端軟骨直下の細胞集団に影響しうる制御シグナルのprimary sourceとして機能している可能性を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
H28年度に実施予定であったRNAシークエンス解析を、次年度での実施に計画を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長管骨内のHhシグナル受容細胞において、発現を見せる分子をDNAアレイ解析により同定する。
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Research Products
(8 results)