2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08139
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
小林 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60376548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腸管閉鎖症 / 管腔形成 / 発生 / メダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管閉鎖症は、先天的に腸の一部が閉鎖・狭窄する疾患である。本研究では、胚発生期に腸管閉鎖を示すメダカ突然変異体を用い、その遺伝的要因と、発症のメカニズムを明らかにするとともに、脊椎動物における腸管形成機構の一端を明らかににすることを目的としている。 前年度までの研究で、原因遺伝子を同定し、腸管の閉鎖が観察される部位以外では形態的な異常を示さないこと、また腸管閉鎖が始めて観察されるのが、腸管の管腔形成が完了するstage26(2日胚)であることを明らかにした。本年度はこの腸管の閉鎖が引き起こされる時期において、どの様な異常が観察されるかについて解析を行った。ファロイジンを用いてF-アクチンの集積を観察した所、変異体胚において腸管の閉鎖に先行するstage25の胚において腸管の一部の頂端側と基底膜側の両方に強いシグナルを認めた。この部位は腸管閉鎖が生じる部位であり、腸管閉鎖の原因と考えられた。更にアクトミオシン系の制御に関わるミオシンIIの調節軽鎖(MRLC)のリン酸化状態を調べた所、リン酸化タンパク質のシグナルも同様に亢進していることが観察された。これらの現象はstage24の胚では観察されず、変異体胚は野生型胚と区別できない。以上の結果から腸管の管腔形成が完了する直前にアクトミオシン系のシグナルが異所的に亢進し、異所的なアクトミオシンの太い束が生ずる事により、腸管閉鎖をひき起こすと考えられた。そこでミオシンの阻害剤であるBlebbistatinを用いた実験をおこなった。腸管閉鎖を引き起こす直前かつF-アクチンの集積などが観察されたstage25の胚をBlebbistatinで処理した所、腸管閉鎖が抑制された。従って腸管閉鎖の原因はアクトミオシン系の亢進が原因であると考えられた。 以上の結果は第122回日本解剖学会総会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は変異体の表現型解析を主たる目的とし、抗体染色による解析やトランスジェニック系統の作出とそれを利用した解析を予定していた。以下の通り概ね順調に進んでいる。 1 表現型解析 前年度に原因遺伝子がアクトミオシン系の制御に関わる遺伝子であることを明らかにしたことに基づき、アクチンやミオシンと行った細胞骨格に対する抗体を用いて表現型の詳細な解析を行った。このことにより当初の目的である、いつ、どの組織で、どの様な現象により腸管閉鎖が生じるかについて、2日胚の腸管の管腔形成が終了する時期に、腸管上皮において、局所的なアクチン繊維の異常な集積によって引き起こされることを明らかにした。 2 トランスジェニック作成 前年度から引き続いて解析用のトランスジェニック系統の作成を行った。Crispr/Cas9のシステムを導入し、ノックインによるエンハンサートラップの手法を用いてトランスジェニックを2系統作成した。内胚葉と腸管形成の際に発現が確認されているsox17とfoxa2のエンハンサー領域に、minimal promoterを付加した膜結合型のGFPを挿入したものであり、両系統とも表現型解析の結果から重要であると考えられる腸管の管腔形成の際に発現が認められ、リアルタイムでの解析を行うことが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成したトランスジェニック系統を用い、腸管の閉鎖が起こる際の変化をタイムラプス観察により解析する。膜結合型GFPのトランスジェニック系統に加え、F-actinをライブで可視化できるLifeact-mCherryを発現するトランスジェニック系統を作成する。これら膜結合型GFPとLifeact-mCherryのトランスジェニック系統を用い、腸管の形態形成とF-actinの集積をリアルタイムで観察することにより、変異体における異常なF-actinの集積と腸管の閉鎖の関係を精査する。同時に正常発生においても同様の観察を行うことにより、アクトミオシン系の制御がどのように腸管の管腔の形成とリンクしているのかを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
予備実験の結果から、作成したトランスジェニック系統を用いたライブ観察に、ライトシート顕微鏡を用いた観察が有用であることが示された。ライトシート顕微鏡は本学に設置されておらず、他機関に出張して観察を行う必要があり、そのため当初の計画より多くの旅費が必要となることが予想されるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他機関に設置されているライトシート顕微鏡を使用するための旅費として用いる。
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