心臓発生過程でおこる心外膜前駆細胞分化でのレチノイン酸の役割

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K08140
• Research Institution: Osaka City University
• Principal Investigator: 山岸 敏之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60255122)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 発生学 / 心臓

Outline of Annual Research Achievements

心外膜前駆組織 (proepicardium organ)は、胚心臓の静脈洞に形成され、発生の進行にともない胚心臓をおおい、成人心臓の心外膜や冠状血管になる。近年、心外膜前駆組織は冠状血管の平滑筋細胞・内皮細胞、心臓線維芽細胞、血球に分化するだけでなく、心筋細胞へ分化する可能性も示唆されている。しかしながら、「心外膜前駆組織の発生のしくみ」はほとんど分かっていない。心外膜前駆組織発生の仕組みを明らかにすることは「心臓の形づくり」の解明につながるばかりではなく、将来的な心外膜前駆組織を利用した疾病治療の開発に寄与すると考えている。研究代表者は、中胚葉から心外膜前駆組織への分化がこれまで報告されていたよりも早い発生段階で決定されること、そしてその分化にレチノイン酸が関係している可能性を見出した。本年度は予備実験から得られたデータに基づき予定心外膜形成領域の詳細な検討、またその領域の培養法の検討を行った。その結果、当初想定した時期よりもさらに早い段階で分化決定が行われている可能性を得た。そのため予定心外膜形成領域を調べる実験系、組織培養法についての再検討を行った。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度に計画していた予定心外膜形成領域を調べる方法の検討に時間がかかったため当初予定していた計画よりやや遅れている。予定心外膜形成領域は臓側中胚葉から形成される。そのため、in ovoで細胞の蛍光染色をするときには卵殻に窓を開けた後、卵黄膜、外胚葉、壁側中胚葉のそれぞれをを微小外科手術により一部切断する必要がある。この実験系の検討と手技の習得により実験の進行が遅れた。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究計画の大きな変更は考えていない。しかしながらニワトリ原腸胚中胚葉の細胞系譜を容易に行えるようtol2 systemを用いた蛍光遺伝子導入による細胞系譜解析法の検討も行いたい。この方法を用いることにより生きたままの細胞系譜の解析が可能になると考えている。また、これまで行っていた時期よりもより早期の予定心外膜形成領域を含む中胚葉の培養系を早急に確立したい。

Causes of Carryover

細胞系譜を解析する実験方法の検討により、予定していた実験に使用する試薬・物品の購入ができなかったため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

27年度に予定していた実験を引き続き行うことから、これらの実験に使用する試薬・物品の購入をおこなう。ただし、新たに「tol2 systemを用いた蛍光遺伝子導入による細胞系譜解析の実験」を計画していることから、この実験に使用する試薬の購入も予定している。28年度の実験計画は、現在のところ予定どおり行うことを計画している。