2016 Fiscal Year Research-status Report
脂質関連分子を介する新たなAMPA型グルタミン酸受容体のシナプス集積機構の解明
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15K08151
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
謝 敏カク 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (40444210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
深澤 有吾 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60343745)
黒田 一樹 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (60557966)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Phldb2 / LTP / LTD / PIP3 / AMPA-R |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプス伝達効率を動的(シナプス可塑性)に制御する仕組みは、学習記憶をはじめとする脳の高次機能に深く関与している。シナプス伝達の大きさはシナプス後電流を通すAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA-R)のシナプス内発現数に比例することが示され、AMPA-Rのシナプスへの運搬と除去に関わる分子機構の解析が進められている。しかし、膜脂質の役割については、まだ不明な点が多い。 神経細胞においては、ホスファチジルイノシトール (3,4,5) 三リン酸(PIP3)がAMPA-Rのシナプス後肥厚部上での発現調節に関与することが報告されている(Arendt et al.2010)。しかし、PIP3とAMPA-Rを繋ぐ分子実体やその制御機構の詳細は解明されていない。 我々は、PIP3に高い親和性を持ち、脳に広く発現するPhldb2 (pleckstrin homology-like domain, family B, member 2)の機能を解析する過程で、この分子がAMPA-Rのシナプス内係留に関わるPSD-95の細胞内動態に関与すること、更に、AMPA-RやNR1のシナプス発現量の制御への関与を示唆する結果を得た。また、Phldb2欠損(KO)マウスの海馬CA1シナプスでは、LTDと長期増強 (LTP)の両方のシナプス可塑性が欠如していることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Phldb2はシナプス膜表面におけるグルタミン受容体であるAMPA-R やNMDARの発現密度の制御に関与することの証明 シナプス前から放出されたグルタミン酸は、グルタミン酸受容体のAMPARとNMDARに結合することで興奮が伝達されます。海馬CA1放射状層のシナプス内AMPARおよびNR1の発現をSDS-FRL法で解析しました。その結果シナプスの面積とその内部に認められたAMPARおよびNR1標識数の正の相関が有ることを示した。即ち、シナプスのAMPARおよびNR1が発現密度は一定に保たれていることが分った。この標識密度の平均値は、WTマウスに比べてKOマウスで有意に低下しことから、Phldb2がグルタミン酸受容体の細胞膜上の動態やグルタミン酸受容体のシナプス後膜での係留に関与していることが示唆された。 Phldb2はNMDAR-CaMKII 複合体形成に重要であることの証明 海馬CA1シナプスでおきるシナプス後依存的なシナプス可塑性は、NMDARからのカルシウム流入に依存しており、流入したカルシウムが、CaMKIIの活性化とシナプス後部への集積を誘導することで、発現誘導されていることが知られている。このCaMKIIのリン酸化部位の違いが、LTPやLTDといった機能変化の方法性とリンクしていることも報告されており、これら可塑性の発現に、活性化CaMKIIとNMDAR、NR2Bとの結合が重要であることが報告されている。従って、このNMDARとCaMKIIとの結合状態は、その方向性を問わず、シナプス可塑性の発現そのものに重要である。CaMKIIに対する免疫沈降実験でNMDARとの複合体形成状態を解析した結果で、WTマウスの脳ではCaMKIIとNMDARサブユニットのNR2A,2B,NR1との複合体形成が確認できたが、KOマウスでは顕著に減少していることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. PIP3-phldb2-CaMKII-NR1の相互作用を明らかにする 海馬CA1シナプスでおきるシナプス後依存的なシナプス可塑性は、CaMKIIのシナプス後部への集積を誘導することで、発現誘導されていることが知られている。そこで、海馬CA1放射状層のシナプス内CaMKIIの発現をSDS-FRL法で解析し, phldb2がCaMKIIのシナプス後部への集積にも重要かどうかを確認する。
2. マウス学習・記憶・不安におけるPhldb2 の重要性の検討 海馬は記憶形成や空間学習能力において重要な役割を果たす。同部位にてPhldb2 がスパイン可塑性に関わることは既に培養神経細胞で確認した。そこでPhldb2-KO マウスの記憶・学習異常の有無について検討する。既に、T 迷路学習を用いた予備実験で、Phldb2-KO マウスは野生マウスに比べて有意に学習能が低下していることを見出した。そこで、新奇環境探索、物件探索および恐怖学習などの記憶課題バッテリーを行う。これらの解析から、phldb2 の学習・記憶能への重要性を確認する。
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Causes of Carryover |
論文投稿などの費用のために翌年に繰越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿などの費用に充てる。
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[Presentation] Phosphoinositide responsive Phldb2 regulates synaptic plasticity2016
Author(s)
Xie MJ, Yagi H, Iguchi T, Oka Y, Fukazawa Y, Matsuzaki H, Iwata K, Ishikawa Y, Sato, M.
Organizer
The Society for Neuroscience 46th annual meeting
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
2016-11-13
Int'l Joint Research
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