2015 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌による胃粘膜上皮細胞の粘液分泌異常と極性崩壊のメカニズムの解明
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15K08155
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
濱田 文彦 大分大学, 医学部, 教授 (70252707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 暁憲 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部・生理学研究室, 室長 (70549451)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 胃粘液分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 ピロリ菌感染に伴う急性胃粘膜傷害や胃粘膜上皮構造の破綻が惹起されるメカニズムには未だ不明の部分が多い。本研究は、我々がゲノム規模の遺伝学的スクリーニングによって同定した CagA の標的候補分子に着目し、ピロリ菌の発癌蛋白質 CagA による胃粘液分泌の阻害および胃粘膜上皮構造の破綻の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。
研究計画と実績 標的候補分子は、そのアミノ酸配列から胃粘膜上皮からの粘液分泌に関与する分子と考えられる。平成27年度は CagA と当該標的候補分子の物理的結合に関する詳細な解析を行った。両者を細胞内で発現させると共免疫沈降(共沈)が確認され、さらに蛍光免疫染色法による解析より、両者の細胞内における局在が一致することが明らかとなった。あわせて CagA がその C-terminal 領域を介して標的候補分子と結合すること、標的候補分子側の結合領域は粘液分泌に必須の役割を担う部分に相当することも明らかとなった。以上の結果より、CagA が当該標的候補分子と結合することによって粘液分泌が阻害され、これに伴い胃粘膜傷害が引き起こされることが推測された。次に、CagA がこの標的候補分子と結合するために必須のアミノ酸を同定するために、CagA の C-terminal 領域に順次アミノ酸置換を導入した複数の変異型 CagA を作製した。これらを個別に当該標的候補分子とともに細胞内で発現させ、共沈実験を行うことにより、両者の結合に必須となる CagA のアミノ酸の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CagA と当該標的候補分子との物理的結合の詳細を明らかにすることができたことから、今後この結合が胃癌の発生にどのような意義を持つのかという点に着目した研究に取り組むことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
CagA が胃粘膜からの粘液分泌を阻害することを証明する。このため、スナネズミを用いた実験のほか、胃のオルガノイド(器官様構造体)を用いた解析を行う予定である。さらに、当該標的候補分子と結合できない変異型 CagA は粘液分泌を阻害する能力を失うことを証明する。
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