2015 Fiscal Year Research-status Report
上皮組織構築における細胞接着-細胞骨格インターフェースの機能解析
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15K08158
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 雅彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70270486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 上皮細胞 / 細胞接着 / 細胞骨格 / 腫瘍形成 / 癌細胞転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正常な上皮組織の形成・維持のメカニズム、ならびに、メカニズムの変化・破綻によって生じる疾患に関し、上皮細胞間接着と細胞骨格をつなぐインターフェースとして機能する分子に着目して解明を進めることを目的としている。 当該年度においては、上皮が深く関わる代表的疾患である癌を対象とした解析に取り組んだ。癌細胞の多くは上皮に由来し、正常な細胞がgenetic, epigeneticな変化により組織内で増殖異常をきたして原発巣を形成し、その中の一部が実質組織周辺へと浸潤して血管内やリンパ管内に侵入して遠隔臓器へと移動する転移性を示す。この過程においては、癌細胞にEpithelial-Mesenchymal Transition (EMT)と呼ばれる変化が起き、上皮としての特徴を喪失して線維芽細胞様の状態に移行すると想定されている。 EMTの典型的な特徴として、タイト結合・アドヘレンス結合といった上皮細胞間接着構造の消失が知られているが、同時に起こる細胞骨格構造の変化に関して分子レベルの知見は限られている。そこで、上皮細胞間接着構造に局在して細胞骨格制御に働く可能性がある分子の発現を、正常上皮細胞、非転移性癌細胞、転移性癌細胞の間で比較解析した。 その結果、調節分子の発現が、癌細胞の転移能の有無によって転写レベルおよびタンパク質レベルで差を示すことが明らかになった。さらに詳しく遺伝子解析を行ったところ、非転移性癌細胞と転移性癌細胞では異なるアイソフォームが発現していることを見出した。また、特定のアイソフォームのみを認識する抗体を作製し、異なるアイソフォーム分子が実際にタンパク質として細胞内で発現していることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているとした理由は、「正常上皮」と「異常上皮」の間で、上皮細胞間接着と細胞骨格をつなぐインターフェースに差があることを、具体的に明らかにすることができたからである。特に、転移性癌細胞という臨床的にも大きなターゲットを対象とした知見である点を、自身では評価している。以下に述べる今後の推進方策を通じて、社会に還元可能な研究成果をえられるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、転移性癌細胞に特異的に発現するアイソフォームが、癌細胞の転移能に対して機能的に関与しているのか解析を行いたいと考えている。そのために、CRISPR/Cas9系を用いて標的分子の遺伝子破壊を行い、発現を消失した細胞の樹立を行う予定である。樹立細胞を用いて、転移性癌細胞の運動能、浸潤能、増殖能といった性質がどのような影響を受けるか解析し、機能的関与の有無を明確にする。 また、培養癌細胞およびヒト癌組織切片の免疫染色を行い、アイソフォームごとの局在様式を明らかにする予定である。さらに、結合分子や活性の違いなど、分子としての性質がアイソフォームによって異なる点を明らかにし、それらが癌細胞の転移能にどのように結びついているのか理解を深めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究に使用した試薬類の多くが汎用性の高いもので、前年度までに購入したものが継続して利用可能であったため、新たに購入する試薬類が当初の予定よりも減少したことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度で得られた情報をもとに、次年度では様々な機能解析ならびに組織免疫染色などを行って研究を展開させていく予定であり、そのために必要となる試薬類や動物の購入等に使用していきたい。例えば機能解析のために、特殊な細胞培養インサートや細胞移植のためのヌードマウスを入手する予定である。 また、実験手法の習得や特殊な装置を使用するための他大学への出張、学会発表や論文発表のためにも使用していきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)