2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08159
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (00232471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑山 直之 愛知医科大学, 医学部, 助教 (80534792)
曲 寧 東京医科大学, 医学部, 講師 (70527952)
平井 宗一 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70516054) [Withdrawn]
林 省吾 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60349496)
宮宗 秀伸 東京医科大学, 医学部, 講師 (80422252)
李 忠連 東京医科大学, 医学部, 講師 (80319532)
倉升 三幸 (北岡三幸) 東京医科大学, 医学部, 助手 (70468643)
永堀 健太 東京医科大学, 医学部, 助手 (50759561)
小川 夕輝 東京医科大学, 医学部, 助手 (20529250)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラット / 精巣 / 異所性移植 / 免疫特権 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、精巣のimmune privileged sitesの性質を明らかにするために、昨年度我々が考案した異所性精巣移植を用い、同系ラットと異系ラットの精巣をそれぞれ移植し、移植後の精巣における免疫応答の差異を比較した。 具体的内容:異所性精巣移植を用いて、LEWラットの精巣をLEWに移植した拒絶を起こさない同系群、移植実験で急性拒絶モデルとしてよく使用されるACIラットからLEWに移植した急性拒絶群、また慢性拒絶モデルによく使用されるF344ラットからLEWに移植した慢性拒絶群、これら3群を移植から3日後に評価を行った。慢性拒絶群の精細管は保たれており、同系群と有意な差はなかった。急性拒絶群は、多くの精細管に精子形成障害をきたしているのが観察され、定量した結果においても同系群との差は有意であった。また急性拒絶群は、精巣内の毛細血管周辺にリンパ球が見られ、CD4、CD8の免疫組織化学染色の結果では、同系群、慢性拒絶群と比べ有意にそれらの陽性細胞が認めらた。Real-Time RT-PCRでは、炎症性サイトカイン(IFN-γ、IL-10、IL-1β)、細胞死関連(Casapse3、8)の発現が急性拒絶群において有意に高いことを示した。慢性拒絶群は、同系群と有意な差は見られなかった。 意義・重要性:移植免疫実験によく用いられる急性拒絶モデルと慢性拒絶モデルを比較に用いたことで、精巣における免疫反応がこれまで報告されている他の臓器(心臓、腎臓)による移植実験の結果と類似していることが分かった。精巣のiummune privilegeの有無およびその程度を明らかにするために、精巣、心臓および腎臓間での拒絶の継時的な比較を観察することが、今後重要と考えられる。今回得られた結果は、異所性精巣移植が精巣の免疫学的実験移植モデルとして有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精巣の免疫環境を解明することを目的とした本研究は、段階を経て順調に進んでいる。昨年度、過去の移植法と比較し、手術時間を短縮させ、成功率を安定させた「異所性」精巣移植を確立したことで、今年度の免疫学的な解析を効率よく進めることができた。異所性移植を用いて、同系と異系(急性・慢性拒絶モデル)を比較したことによって、異所性精巣移植が精巣の免疫学的実験移植モデルとしても有用であることが示唆された。これらの結果を踏まえ、異所性精巣移植を免疫学的移植モデルとして使用することで、効率的に移植を行え、安定した結果をさらに得ることができるだろう。今回は移植後3日というポイントでしか見ていなかったが、移植数を重ね、交差適合条件、経時的変化などより多くの条件で観察し、免疫学的な解析を進めることで、精巣のimmune privileged sitesの性質をより詳細に解明していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、精巣の免疫学的解析をさらに進めていく。今年度は、移植から3日後の精巣内の変化を観察したので、より短期的なポイント(移植から90分、1日)と、より長期的なポイント(7日、30日、60日、90日)と経時的な免疫応答の変化を捉えていく。さらに、精巣の免疫特権が移植免疫にどの程度影響を及ぼしているのかを評価するために、他の臓器(心臓や腎臓)を同条件で移植し、比較していく。また、オスの精巣をメスに移植し、メスの免疫系が精巣へどのような影響を及ぼすかを検討する予定である。これらの実験により、免疫学的解析・評価を進めることで、精巣のimmune privileged sitesの性質やメカニズムの一端を解明したい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、987,472円の翌年度繰越額を計上した。今年度の計画では、より多くの移植条件で移植数を重ね、免疫学的解析のための実験(免疫組織化学染色、ウエスタン・ブロッティング)をより多くの抗体を用いて行う予定であった。しかし、研究実績概要記載の3群における移植後3日というポイントで、CD4、CD8の結果のみに留まり、他の条件での移植、他の抗体による染色にまで至らなかった。その理由としては、共同研究者の他大学へ転職に伴い、一部の実験に遅れが出たことが挙げられる。すでに、共同研究者は他学にて実験環境を安定させているが、当初計画していた予定よりも実験に遅れが生じてしまったため、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金額は、平成28年度に引き続き、精巣のimmune privileged sitesの性質やメカニズムの一端を解明するための免疫学的な評価・解析を進めるための経費に当てることとしたい。
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