2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝薬理学を用いた前頭前皮質へのコリン作動性神経入力の解明
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15K08160
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小田 哲子 東邦大学, 医学部, 講師 (90224237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船戸 弘正 東邦大学, 医学部, 准教授 (90363118)
恒岡 洋右 東邦大学, 医学部, 助教 (50549011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ムスカリン受容体 / M1 / 前頭前野 / 免疫多重染色 / 高次認知機能 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
アセチルコリン作動性神経は大脳皮質に広く分布し、代謝型受容体のムスカリン受容体M1を介して記憶や学習などの高次脳機能に深く関わっている。昨年度までのラットを用いた研究で、M1を含有する皮質神経細胞の同定と細胞種ごとの含有率、さらにその細胞内局在分布パターンを解析した。さらに今年度の研究では、非神経細胞であるアストロサイトもM1を含有していることを明らかにした。I層からVI層にわたる全層で、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)陽性のアストロサイトにM1受容体の免疫陽性を認めた。M1免疫標識は、核の周囲および近位と思われるGFAP陽性の太い突起に認められたが、細い突起ではほとんど観察されなかった。げっ歯類の軟膜直下のグリア境界膜は霊長類のそれと異なり、単層の細胞(表層アストロサイト)で構成されるが、この細胞には特に強いM1免疫陽性を確認した。この細胞は2012年にマウスで報告されたばかりの細胞で機能はいまだ不明であるが、今回の結果からコリン作動性システムに深く関与していることが強く示唆される。また、表層アストロサイトは垂直にⅠ層の深層へ向かう太い突起を有するが、これらもM1免疫陽性を示した。アストロサイトは、シナプス伝達の修飾にも働いているため、グルタミン合成酵素をマーカーとして、スパイン周辺のperisynaptic budを観察したところM1受容体の免疫標識は検出されなかった。従って、M1のアストロサイト細胞内局在は、細胞体と突起の近位に限局することが明らかに示された。M1受容体を介するアセチルコリンの修飾は、神経細胞に限定するものではなく、アストロサイトも含めて広く影響を及ぼしていることを強く示す結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画時には全く予期していなかったアストロサイトにおいてM1免疫陽性を認め、この細胞での共存率と細胞内局在の解析を行った。この結果は大脳皮質におけるアセチルコリンの修飾作用の理解に大きな進展を与えるものであると期待され、今後の研究の展開に影響を及ぼすものである。Vglut2-IRES-Creマウスを用いたDREADDシステムによる視床皮質路の活性化実験をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
概要で示したラットのデータをまとめて報告する予定である。また、Vglut2-IRES-Creマウスを用いたDREADDシステムによる視床皮質路の活性化実験を行う。視床皮質路を活性化したのち、c-fos発現をマーカーとした活性化細胞の同定と皮質内分布パターンを解析する。これらの基礎データが得られた後、大脳基底部のアセチルコリン細胞を脱落させたマウスで同様の実験を行い、駆動性入力(視床皮質路)による皮質活性化におけるアセチルコリン入力の有無による影響を検討する。
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Causes of Carryover |
上記のようにアストロサイトにおいてもM1の局在が認められ、その細胞内局在の論文化を急ぐ必要があり、当初の実験計画を多少変更した。そのため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度分の研究費と合わせて試薬や実験動物のための費用として用い、上記した実験を遂行する予定である。
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Research Products
(1 results)