2017 Fiscal Year Research-status Report
マーモセット視覚中枢における、電気シナプスを介した化学シナプスの伝達効率の改善
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15K08193
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
日高 聡 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00228735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 修 東邦大学, 理学部, 教授 (70119907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気シナプス / ギャップ結合 / グルタミン酸シナプス / 興奮性シナプス後電流 / 大脳皮質視覚野 / 網膜 / 神経回路網の成熟 / シナプス伝達の効率化 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質視覚中枢の並列神経回路網の構築とその成熟過程で、電気シナプスを介した化学シナプス伝達の効率化のメカニズムを解明するため,比較生理学的な実験解析を行いました。コモンマーモセットの組織標本と生後8日までの幼弱ラットの標本を用いて,レーザー共焦点顕微鏡と超高圧電子顕微鏡で解析し,網膜神経節細胞間と,大脳皮質視覚野の神経細胞間とで,ギャップ結合を同定し,その微細形態を解明しました。特徴的に成長過程の幼弱ラットの大脳皮質の錐体細胞群は,視覚野でカラム状に配列して細胞体の間にもギャップ結合が存在することを見つけました。 視覚機能の達成における電気シナプスの機能的役割を遺伝子発現のレベルで明らかにするために,連携研究者との共同で,電気シナプス・ギャップ結合蛋白・コネキシンに関する遺伝子組み換え動物を用いた解析行っていますが,未だ良い成果は得られていません。 生後4日から生後8日までの幼弱ラットの大脳皮質の錐体細胞間で電気生理学実験を実施して解析し、電気シナプスを介して結合しているそれぞれの神経細胞への入力電流が増大し、活動電位の閾値以下の電流がそれぞれの神経細胞に入力した場合には容易に神経スパイクが発生できることを明らかにしました。研究分担者は本電気生理学実験のデータを元に,計算論的数理モデルを構築して解析しました。その結果,大脳皮質の神経細胞間に電気シナプスが存在する場合には,細胞間の結合抵抗が小さい時(カップリングが強い時),片方の神経細胞だけに活動電位の閾値以下の電流を入力しても神経スパイクが発生できないが,一方,両方の細胞に同時に閾値以下の電流を入力すると容易に神経スパイクが発生できることと,それが神経細胞間での同期興奮を引き起こしていることを実証しました。この実験結果から、電気シナプスによる化学シナプス伝達の効率化・情報伝達の改善のメカニズムが解明できると考えられます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,大脳皮質の神経回路網における電気シナプスを介したグルタミン酸出力シナプスにおける情報伝達の効率化を解明するために,電気生理学手法、神経回路網の形態構造・微細形態をレーザー共焦点顕微鏡や超高圧電子顕微鏡による解析,また電気シナプスの視覚機能の役割を遺伝子発現のレベルで明らかにするための,ギャップ結合蛋白・コネキシンに関する遺伝子組み換え動物を用いた解析とを利用しています。 発達過程のラットの大脳皮質と網膜の神経組織での生理機能の解析は順調に進んでおり、またラットとコモンマーモセットとの比較生理学的な神経回路網の微細形態の解析も進んでいます。その結果,大脳皮質の視覚野での神経細胞の特徴的な配列様式とそれらの細胞間のギャップ結合連絡の存在が判明し,また神経スパイクの発生における電気シナプスの生理機能が明らかになりました。さらに,研究分担者が計算論的数理モデルを構築して解析しました。神経回路網の形態構造を基盤にし,得られた電気生理学実験のデータをパラメーターにして,コンピューターシミュレーションモデル解析を行った結果,大脳皮質の視覚野での神経細胞の特徴的な配列様式があってギャップ結合連絡が存在すると,神経スパイクの発生における電気シナプスの生理機能が成立することが実証できました。 しかしながら,電気シナプスの視覚機能を遺伝子発現のレベルでも証拠を得るために必要なギャップ結合蛋白・コネキシンに関する遺伝子組み換え動物を用いた解析が進んでいません。脳神経系への組み換え遺伝子の導入・発現がうまくできていません。今後,連携研究者以外に別の研究協力者からも実験指導を受けて研究を進めて行きたい。 本研究の成果を論文に発表しているが,まだ投稿中の論文があり,今後,論文受諾のために必要な追加実験を行う予定です。そのためには,追加の実験が必要になると考えられ,研究遂行して行く予定です。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットとコモンマーモセットを用いて,大脳皮質の視覚中枢の並列神経回路網の構築とその成熟過程で、神経細胞間の電気シナプスを介したグルタミン酸出力シナプスにおける情報伝達の効率化の生理機能の探索を進めます。実験解析法の技術シーズ: 電気生理学的にdual whole-cell patch-clamp 法による解析を進め、また神経回路網の形態構造の解析にレーザー共焦点顕微鏡,電子顕微鏡や生理学研究所の超高圧電子顕微鏡によって超微細形態の解析を進め,さらに電気シナプスの視覚機能の役割を遺伝子発現のレベルで明らかにするために,ギャップ結合蛋白・コネキシンに関する遺伝子組み換え動物を用いた解析とを利用し,電気シナプスが働いて視覚機能を達成する神経回路網を発達生理学的に解析を進めます。 本研究の成果について投稿中の論文が複数あり,今後,論文受諾のために追加の実験が必要になると考えられ,実験研究を遂行して行きます。 網膜と大脳皮質の視覚野の構築とその成熟過程の神経回路網で,電気シナプスを介したグルタミン酸出力シナプスにおける情報伝達の効率化の生理機能を解明します。さらに視覚系での働きが脳においてどのような高次機能を担っているかについても比較生理学的に解明します。 研究の成果から、電気シナプスを介したグルタミン酸出力シナプスにおける情報伝達の効率化という“発達生理学”上での,脳の高次の神経機能の発現メカニズムを提唱します。
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Causes of Carryover |
研究目的を精緻に達成するために,研究計画の見直しが必要となり,その研究計画を遂行するのに想定以上に時間が掛かっています。本研究の成果を論文数本に発表しているが,未だ投稿中の論文があり,論文受諾のために必要な追加実験を行う予定です。そのためには,連携研究者と研究協力者との追加の共同の実験が必要であり,本研究遂行のために,補助事業期間の延長を申請して,延長の承認を貰っています。 このため,延長期間での研究のために,残金は¥371,547あります。研究分担者がすでに構築した計算論的モデルを用いて,さらに実験データを解析するために,研究代表者は予算の範囲内で必要なノートパソコン(パーソナルパソコンPC)を購入する予定です。また,追加実験を行うのに必要な物品を購入し,さらに予算の範囲内で受諾される論文の別刷りも購入する予定です。
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