2016 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞後の血管透過性亢進における線溶系の機能の解明
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15K08194
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 信夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90260281)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 線溶系 / 脳梗塞 / 血管透過性 / プラスミン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞に伴う血管透過性亢進領域の大きさを、脳定量障害モデルを用いてプラスミノゲン(Plg)遺伝子欠損(KO)マウスと対照WTマウスに誘導した脳梗塞において比較を行った。その結果、PlgKOマウスと対照野生型(WT)マウスとも1日目から4日目にかけて血管透過性亢進領域の縮小を認めた。また1日目では両マウスの血管透過性亢進領域の大きさに有意な差を認めなかったものの、4日目ではWTマウスに比べてKOマウスで血管透過性亢進領域が有意に大きいことを明らかにした。これらの結果より、プラスミノゲンが血管透過性亢進の回復に寄与する可能性が示唆された。 一方、組織レベルのプラスミン活性の分布を詳細に検討した結果、血管透過性が亢進しているものの神経細胞が生存している領域において血管様のプラスミン活性の分布が認められたのに加えて、血管透過性が亢進している領域の周囲部において、血管透過性が亢進していないもののプラスミン活性が認められる血管用構造が確認できた。これらの結果も、血管透過性の回復後もしばらくはプラスミン活性が残存する可能性を示唆する。 マウス脳由来血管内皮細胞株であるbEnd.3を用いた実験においては、血液脳関門の構成因子であるVE-CadherinおよびClaudin-5のタンパク量およびmRNA量が虚血を模した低酸素・低グルコース処理(6時間)によって減少すること、およびプラスミンの添加により変化しないことを明らかにした。これらの結果より、血管内皮細胞同士の接着に寄与するこれらのタンパク質は虚血の影響で減少するもののプラスミンの分解は受けないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討から、プラスミン活性が血管透過性の修復の前後に発現すること、およびその欠損で修復が遅延することが明らかとなり、プラスミンが脳梗塞に伴う血管透過性亢進の修復に寄与することが明らかとなった。また、プラスミンの活性化にはウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターが寄与することが明らかになるとともに、プラスミンの下流でマトリックスメタロプロテイナーゼが寄与する可能性が示唆された。これらの結果より、本研究の検討課題である、プラスミン活性の寄与の理由の解明、およびプラスミンの作用メカニズムの解明が順調に推移していると考える。 また、培養血管内皮細胞におけるプラスミンの基質の検討においては、VE-CadherinおよびClaudin-5の分解が起こらないことを明らかにし、プラスミンが血液脳関門の構成因子であるこれらのタンパク質の分解には寄与しないことを示した。これらの結果も、プラスミンが血液脳関門の破壊ではなく、その後の修復に寄与する可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞後の血管透過性亢進の回復には血管リモデリングが寄与し、血管新生のプロセスが関与している可能性が高い。そこで、血管新生阻害因子が脳梗塞後の血管透過性亢進の回復、およびプラスミンの活性の誘導に寄与する影響を検討する。具体的には、脳定量傷害モデルにより脳梗塞を誘導した後、血管新生因子であるエンドスタチンを投与し、血管透過性亢進の回復およびプラスミン活性の誘導への影響を検討する。また、脳梗塞後の血管透過性亢進の回復における血管新生の関与を検討するため、新生細胞のマーカーとなるBrdUを傷害誘導後に投与し、血管透過性の修復された領域での新生血管の存在を確認する。 また、培養血管内皮細胞の血管修復モデルであるスクラッチモデルをbEnd.3に用いて、プラスミンおよびプラスミン阻害因子の添加が修復に及ぼす影響を検討する。 一方、血液脳関門の機能は血管内皮細胞とその周囲に分布するペリサイトの接着により制御されていることが報告されている。そこで、血管内皮細胞とペリサイトの結合に関与するNinjurinに対するプラスミンの影響を検討する。具体的には、正常あるいは酸素グルコース除去刺激を付加したbEnd.3にプラスミンを添加し、Ninjurinのタンパク質量あるいはmRNA量に対する影響を検討する。
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