2016 Fiscal Year Research-status Report
エストロジェンの心血管機能調節作用の解明:オキシトシンとビタミンDの関与の検証
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15K08203
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
村田 拓也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (70281186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 達 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00263096)
成田 和巳 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (80270958) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビタミンD / オキシトシン / エストロジェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、エストロジェンの心血管系(心拍数、血圧)の調節におけるオキシトシン(OT)およびビタミンD(VD)の役割を明らかにすることである。(1)性周期中の心血管系のオキシトシンレセプター(OTR)およびビタミンDレセプター(VDR)の発現測定、(2)OTおよびVDの心血管系の細胞への作用、(3)性周期中の心拍数と血圧の測定を計画している。主に(2)、特にVDの心血管系の細胞への作用について検討した。心筋細胞内のCa動態を調べるために、まずマウス心房筋由来培養細胞であるHL-1細胞を用いて、心拍数の調節に関わるCaトランジエントの測定を行った。正常細胞において安定した周期的なCaトランジエントを観察することができたので、次にVDRの発現を抑制した状態を作製しVDRの関与について検討した。その結果、VDRの発現を抑制したHL-1細胞では、80%の細胞にCaトランジエントの異常が観察された。さらに、VDRの発現を抑制したHL-1細胞にどのような変化が起こっているのかを調べるために、DNAアレイ解析により発現している遺伝子の変化について調べた。その結果、心筋機能に関わる遺伝子を含む数種類の遺伝子の発現に異常が観察された。さらに、それらの遺伝子の発現をHL-1細胞で抑制するとCaトランジエントの異常が起こることが明らかになった。このことは、VDによる心機能の調節にこれらの遺伝子が関わっていることを示唆している。また、それらのVDR関連遺伝子の発現を抑制すると、他のVDR関連遺伝子発現に変化が生じることから、これらVDR関連遺伝子間での相互作用による複雑なメカニズムが示唆された。さらに、(1)のラットの性周期中のOTR およびVDRの発現測定と並行して、これらのVDR関連遺伝子群の発現についても調べ、VDR関連遺伝子の役割やネットワークについて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋におけるVDRの役割を検証するために、マウス心房筋由来細胞であるHL-1細胞を用いて、Caトランジエントおよび遺伝子発現を調べた。HL-1細胞においてVDR発現を抑制すると、コントロール細胞で観察される周期的なCaトランジエントに異常が観察された。VDは遺伝子の発現を調節する因子であるので、siRNAによりVDRをノックダウンしたHL-1細胞における遺伝子発現の変動をDNAアレイ解析により調べた。その結果、actinin 2、PDZ and LIM domain protein 3、 PLAGL1、the cardiac myosin-binding protein Cなど心筋の収縮の調節や遺伝子の転写に関わる数個の遺伝子の発現が減少していた。これらの遺伝子の発現をHL-1細胞で抑制すると、VDRを抑制した場合と同様に周期的なCaトランジエントに異常が観察された。さらに、これらの遺伝子が相互にそれぞれの遺伝子発現に関与していることが明らかになった。これらの実験に並行して、性周期中の心筋細胞におけるOTRやVDRの発現の変化に加え、これらのVDR関連遺伝子の発現および相互作用について検討中である。マウス心房筋由来細胞HL-1細胞を用いた結果から、VDにより誘導される遺伝子が相互に調節し合うネットワークを構築して心機能を調節していることが示唆される。今後in vivo実験のデータによりVDR関連遺伝子の役割の解明はさらに進むと考えられ、心筋におけるVDRの役割およびそのメカニズム解明を目指す本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回用いたHL-1細胞において、VDRの発現低下が細胞の周期的活動に影響し、さらにVDRにより発現が調節されている遺伝子群が明らかになった。そして、それらのVDR関連遺伝子群もHL-1細胞の周期的活動の調節に関わり、さらにVDR関連遺伝子群間のネットワークの存在が示唆された。今後は、ラットの性周期の各ステージにおけるOTRやVDR発現調節およびVDR関連遺伝子群の発現調節について、in vivo実験で詳細に検討する予定である。さらに、VD欠乏食を摂取させたラットにおけるVDR関連遺伝子群の変化も検討し、エストロジェン、オキシトシン、VDの相互作用、およびVDR関連遺伝子群の関与について検討を進めていく。同時に、VD欠乏食を摂取させたラットにおける性周期の変化や血圧の変化についても検討する。
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Causes of Carryover |
siRNAを用いた培養心筋細胞による実験の解析の結果明らかになったVDR関連遺伝子群に関する動物実験を行い評価する上で、より効果的に比較検討できるラット性周期のステージを特定して実験を行う必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
正常性周期を回帰するラットおよびビタミンD欠乏食摂取ラットにおいてVDRノックダウンで変動する遺伝子群の役割およびエストロジェンとの関連について検討する。
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