2017 Fiscal Year Research-status Report
気象病発症メカニズムにおける気圧感受機構の解明ー動物実験と臨床実験の連携研究ー
Project/Area Number |
15K08206
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 純 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (00235350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気象病 / 慢性痛 / 内耳 / 鼓膜温度 / 低気圧暴露 |
Outline of Annual Research Achievements |
天気依存性疼痛(天気痛)病態のメカニズムを明らかにする本年度の研究成果は以下の通りである. 臨床実験:天気悪化に伴う気圧変化で,痛みなどの症状を示す天気痛被験者において,内耳の血流障害が病態誘導の原因の一つであるかを検討した.まず天気悪化で片頭痛の症状がスタートする患者に対し,簡易型鼓膜温測定装置を使って,日常の左右鼓膜温を任意に測定をしてもらった.日常の鼓膜温に有意な変化は見られなかったが,天気悪化に伴い片頭痛がスタートするタイミングで,左右の鼓膜温に明らかな差が出現した.この差は通常2~3時間以上持続し,頭痛等の症状が消失するタイミングで消失した.そこで,実験的な低気圧暴露が鼓膜温を変化させるかを調べた.天気痛に罹患する4名の被験者に対して,低気圧暴露刺激(1013 Pa から 40 hPa分の減圧)を与えた.鼓膜温を連続測定できるセンサーを鼓膜近傍に留置し連続的に測定した.対象健常人では,低気圧暴露中に鼓膜温に変化は見られなかったが,天気痛被験者4名では左右の鼓膜温は上昇し,0.6~2.5℃程度の左右差が出現した.復圧するとこれらの変化は消失した.以上から,天気痛患者においては,気圧変化によって左右の内耳ないしは脳内血流に差が出現し,それが疼痛出現の引き金になっている可能性が示唆された. 動物実験:野性型マウス(オス9匹,メス9匹)に対し,1013 hPaから973 hPaへの低気圧暴露を行い,前庭神経核細胞のc-fos免疫染色を行った.また,低気圧暴露を行わずに静置したマウスについても対照群としてc-fos免疫染色を行った.結果として,低気圧暴露群で,前庭神経核(一部の亜核)におけるc-fos陽性細胞数が両性ともに有意に多いことを確認した.以上から,前庭神経核細胞の一部が低気圧暴露時に興奮していることが明らかとなり,気圧感受システムが前庭に存在するものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年4月末で名古屋大学動物実験支援センターを退職し,愛知医科大学に移籍した.それにともない,それまでのヒトを対象とする臨床実験,動物実験ともに,実験セットアップを同大学に移動した.ところが,臨床実験に関する倫理委員会の承認,動物実験に関する倫理委員会の承認に関する手続きと,新しい実験室の整備とセットアップの構築に予想以上に時間がかかり,実験が再開できたのは,平成28年12月となった.そこで,約1年間の遅れを取り戻すため,実験補助員を2名を別のソースで雇用し,実験を急ピッチで行ってきた.努力の甲斐があり,この間で,動物実験では気圧変化を感受する機構が前庭に存在することをおおよそ証明することができた.また臨床実験でも,天気依存性の慢性疼痛患者の内耳あるいは脳血管系の反応特異性を見出すことになった.
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験では前庭神経系が気圧変化に対する感受機構を持つことが,ほぼ確定的になってきたので, 1)慢性痛病態では前庭の気圧感受性に変化が見られるのか 2)前庭における気圧センサーの責任チャネルの同定 を行ってゆく.そのために,慢性痛モデルの導入を行い,一方では,気圧センサーに特異的な責任チャネルの同定のためノックアウトマウスを実験に導入する. ヒトを対象とする実験では,天気痛被験者の内耳血流の動態を鼓膜温度の測定等を行ってあきらかにしてゆく.
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Causes of Carryover |
平成28年4月に名古屋大学を退職し愛知医科大学に移動するに伴い,ヒトの実験ならびに動物実験のシステム立ち上げに,思いの外時間がかかってしまった.その間,実験研究は過去のデータの解析のみに限定されたために,経費をほとんど使用しないでいた.そのため,本年度が最終年度であったが,1年間の研究期間延長を申請し了承された.
来年度は,本研究の本来の計画通り,慢性痛モデル動物を用いた実験系と標的蛋白をノックアウトしたマウスを用いて.前庭系の気圧感受システムの詳細解明に取り組む.すでに候補であるチャネル蛋白をノックアウトしてマウスのライン立ち上げの準備をスタートした,また,実際に繁殖がスタートできるまでは,慢性痛モデル動物を低気圧暴露し,前庭神経の活性化が健常マウスと異なるかについて解析を行う予定である.ヒト実験については内耳の気圧感受性を支配する可能性が高い「天気痛患者における脳内血流の可塑的変化の有無」について,検索を進めてゆく計画である.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Therapeutic effects of diclofenac, pregabalin, and duloxetine on disuse-induced chronic musculoskeletal pain in rats.2018
Author(s)
Ohmichi Y, Ohmichi M, Murai N, Yasui M, Takeshita N, Oshibuchi H, Naito M, Nakano T, Sato J
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 8 (1)
Pages: 3311
DOI
Peer Reviewed
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