2015 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質修飾・結合オシレータが司る時刻依存性適応システム
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15K08217
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
田丸 輝也 東邦大学, 医学部, 講師 (80291706)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | biological clock / circadian rhythm / phosphorylation / protein kinase / enzyme / transcription factor / Bioluminescence / stress response |
Outline of Annual Research Achievements |
体内時計の乱れによる適応(防御・修復)機能の低下は様々な疾患生活習慣病、癌、脳精神疾患等の危険・増悪因子となり得る。環境・ストレス・加齢等による疾病・死に抗う適応系のうち、日周性・環境への同調性をもつ概日時計システムは、時計遺伝子 Bmal1,Clock,Cry,Per によるコア概日転写・翻訳オシレータを中核とする分子時計が司り、全身の細胞でゲノムワイドな生理機能の時間統御を司る。 連携研究者を含む研究代表者らは、分子時計のクリティカルな歯車として蛋白質修飾・結合オシレータ (J Neurochem 1999, Genes Cell 2003,Science 2005, Nature 2007, Nat Struct Mol Biol 2009)を発見し、その細胞傷害ストレスへの応答と適応系の賦活機能(PLoS ONE 2011, 2013)を解明している。本研究は、①コア概日転写・翻訳オシレータ、 蛋白質修飾・結合オシレータ、適応応答システム間の時刻依存的クロストークの動態と構造基盤を探り、②時刻特異的機能操作法を開発し、その時計・適応機能の攪乱・調整効果を調べ、蛋白質修飾・結合オシレータが司る時刻依存性適応システムを解明することを目的とする。 本年度は、クリティカルな蛋白質修飾オシレータとして、リン酸化酵素CK2による時計蛋白質 BMAL1 (Ser90)の日周性リン酸化反応プロセスを、光を利用した生細胞リアルタイム測定などで捉え、哺乳類の脳、皮膚、肝臓等にある中枢・末梢体内時計を駆動する日周性酵素反応の振動メカニズムを解明した(PLOS Biol 2015)。この振動には、CRY の新機能である酵素活性(BMALリン酸化)の抑制が重要だった。本成果は、体内時計が関わる生理現象、時刻依存性適応防御システムを深く理解し、日周性酵素反応を標的とする新たなアプローチから医療に貢献することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、コア概日転写・翻訳オシレータにおいてクリティカルな調節ギアとして働く蛋白質修飾・結合オシレータとして、CK2による時計蛋白質 BMAL1 の日周性リン酸化反応のプロセスを、発光を利用した生細胞リアルタイム測定などで捉え、哺乳類体内時計を駆動する日周性酵素反応の振動メカニズムを解明した。当初、計画していた上記概要に示す①②のテーマのうち、①の中で重要となるコア概日転写・翻訳オシレータと蛋白質修飾・結合オシレータのクロストークによる体内時計振動の機序の解明に大きな前進が見られ、論文を発表した(PLOS Biol 2015)。また、細胞を傷害する熱、活性酸素、UVへの適応応答システムとのクロストークについても探りつつある。②については、また、時刻依存的にBMAL1-S90リン酸化を阻害することで、概日リズムを攪乱する薬剤を開発した(PLOS Biol 2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに以下の研究については目覚しい成果を挙げた、①CK2によるBMAL1 の日周性リン酸化反応のダイナミクス、構造基盤の解明 ②時刻特異的機能操作法の基盤として、BMAL1-S90リン酸化の時刻特異阻害剤を開発し、また、細胞傷害ストレスへの時刻依存的な適応応答についても解明しつつある。今後、どの時刻にどのような構造基盤、オシレータと適応システムのクロストークが作動しているかをさらに詳細に解明できれば、その時刻に最適な適応防御機能を発揮させるストラテジーの開発が可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
平成27年度において、物品購入費が予定より安価にできたこと、主にやり残した組織培養・個体での解析実験に関する使用額が生じたこと、また論文投稿に関する英文校正費用、さらには投稿費用、旅費が未使用として残っていることが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、やり残した組織培養、個体レベルでの機能解析実験を行い、なおかつ新たな論文投稿に向けた準備を行い、投稿する計画である。
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Remarks |
本研究成果は、日経速報ニュース(2105/11/13)、日刊工業新聞紙面(20151116)、化学工業日報紙面(2015/11/16)、医療NEWS(2015/11/17)、教育新聞紙面(2015/12/07)、CIRCL(2016/3/26)等、多数のメディアで紹介された。
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