2017 Fiscal Year Annual Research Report
Age related changes in cholinergic function in the olfactory bulb
Project/Area Number |
15K08225
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
内田 さえ 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90270660)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 嗅球 / コリン作動性神経 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病をはじめとした認知症では,ごく初期(認知機能障害が現れる前)に嗅覚機能が低下することが知られている.嗅覚を司る嗅球は,認知・記憶に関わる大脳新皮質・海馬とともに前脳基底部に由来するコリン作動性神経の入力を受ける.本研究は嗅球コリン作動性神経の機能とその加齢変化を明らかにすることを目的とした.第一に,嗅球でのアセチルコリン(ACh)放出量の加齢変化を調べた.安静時の嗅球のACh放出量および前脳基底部(ブロカの対角帯核水平脚)刺激時のACh放出増加量はともに,成熟ラットと老齢ラットで同程度であった.第二に,コリン作動性神経が嗅球の血管に作用して血流を調節する可能性を成熟ラットで調べた.嗅球に投射する前脳基底部コリン作動性神経は,新皮質・海馬とは異なり,血流に対しては影響を及ぼさないことを明らかにした.第三に,コリン作動性神経による嗅覚調節機能ついて,AChのニコチン受容体機能に着目して調べた.におい刺激を与えると,嗅球の血流はニューロン活動を反映して増加する.におい刺激に対する嗅球の血流増加反応(約7%)は,生理食塩水投与の影響を受けないが,ニコチン受容体作動薬(nicotine, 30 μg/kg)の投与後に約2倍に増大した.この増大効果は,ニコチン受容体のα4β2型サブタイプの活性化を介することを明らかにした.これらの結果は,嗅球に入力するコリン作動性神経がα4β2型ニコチン受容体の活性化を介して,嗅覚感受性を高めることを示唆する.α4β2型ニコチン受容体の数はアルツハイマー病患者の脳で減少することが知られている.従ってα4β2型ニコチン受容体機能の低下に起因する嗅球コリン作動性神経機能の低下が,認知症の初期に現れる嗅覚機能の低下の原因と考えられる.本研究成果をもとに将来,新しい認知症の早期診断基準がつくられることが期待される.
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