2016 Fiscal Year Research-status Report
筋疾患の新規治療標的の創出をめざす一酸化窒素依存的カルシウム放出の生理機能解析
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15K08227
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
三上 義礼 東邦大学, 医学部, 助教 (80532671)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / リアノジン受容体 / カルシウムイオン / S-ニトロシル化 / NICR / 骨格筋 / 病態生理学 / 薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化窒素(NO)は、小胞体膜に局在する1型リアノジン受容体(RyR1)の3636番目のシステインをS-ニトロシル化修飾して活性化し、細胞質にカルシウムを放出する。この現象をNO-induced calcium release (NICR)と呼ぶ。本年度は、S-ニトロシル化修飾を受けるシステインをアラニンに置換したRyr1C3636Aノックインマウスを用いた解析をさらに進めた。 Ryr1C3636AノックインマウスはRyR1の発現やリアノジン結合能、CICR活性が野生型マウスと差が見られず、正常であった。これらの結果は論文としてまとめ、神経細胞死におけるNICRの病態生理学的な意義と共に発表した(Mikami et al., EBioMedicine, 11, 253-261, 2016)。 骨格筋におけるNICRを観察するために、骨格筋初代培養細胞を用いてカルシウムイメージングを実施したところ、神経細胞よりもより低い濃度のNOドナー化合物によって細胞内カルシウム濃度の上昇や発火頻度の増加が確認できた。一方、Ryr1C3636AノックインマウスではNICRが見られなかった。さらに、細胞内でのNO産生もイメージングにより捉えることに成功した。現在、NICRの病態生理学的な意義を明らかにすることを目的として、骨格筋への負荷により生じる変化を野生型マウスとRyr1C3636Aノックインマウスとの間で比較する実験を進めている。 なお、2017年3月の第90回日本薬理学会年会では、レドックスシグナルに関するシンポジウムをオーガナイザーとして開催し、NICRの病態生理学的意義について発表し、広く意見を交換した。また、NOをはじめとするガス状生理活性物質に関する総説も発表した(Mikami et al., Int. J. Mol. Sci. 17, E1652, 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中枢神経系に関連する解析に並行して、Ryr1C3636Aマウスの骨格筋についての基本的な性質を解析することができた。解析機器や解析系の立ち上げも順調に進んでいる。マウスの繁殖も支障なく進んでおり、今後の解析をスムーズに進めていくことが可能であることから、順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
分子・細胞レベルにおいては、初代培養骨格筋細胞を用いたイメージングの手法を活用して、NICRについて検証を進めていく。個体レベルについては、トレッドミル走行試験を導入し、短期的・長期的なトレーニング実験を介して、疲労度や筋肥大、骨格筋組成の変化などを計測し、野生型マウスとRyr1C3636Aノックインマウスを比較する。さらに、エネルギー代謝器官としての骨格筋の機能にも着目し、NICRの生理的、および、病態生理学的な意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
順調に研究が進行し、また、キャンペーンなどを活用して消耗品の購入を行ったため、使用額も少なく研究費を使用できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
骨格筋の機能解析や形態学的な解析に多く費用がかかることが予想されるため、これらに使用する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Nitric Oxide-induced Activation of the Type 1 Ryanodine Receptor Is Critical for Epileptic Seizure-induced Neuronal Cell Death2016
Author(s)
Mikami Y, Kanemaru K, Okubo Y, Nakaune T, Suzuki J, Shibata K, Sugiyama H, Koyama R, Murayama T, Ito A, Yamazawa T, Ikegaya Y, Sakurai T, Saito N, Kakizawa S, Iino M
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Journal Title
EBioMedicine
Volume: 11
Pages: 253-261
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] てんかんモデルマウスにおける1型リアノジン受容体のS-ニトロシル化を介した神経細胞死2017
Author(s)
三上義礼, 金丸和典, 大久保洋平, 中畝拓哉, 鈴木純二, 柿澤昌, 柴田和輝, 小山隆太, 村山尚, 伊藤明博, 山澤徳志子, 伊藤雅方, 冨田太一郎, 村上慎吾, 赤羽悟美, 池谷裕二, 櫻井隆, 斉藤延人, 飯野正光
Organizer
第94回 日本生理学会大会
Place of Presentation
アクトシティ浜松(静岡県浜松市)
Year and Date
2017-03-29
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[Presentation] 一酸化窒素は1型リアノジン受容体のS-ニトロシル化修飾を介して神経細胞死を誘導する2016
Author(s)
三上義礼, 金丸和典, 大久保洋平, 中畝拓哉, 鈴木純二, 柿澤昌, 村山尚, 柴田和輝, 小山隆太, 伊藤明博, 山澤徳志子, 伊藤雅方, 冨田太一郎, 村上慎吾, 赤羽悟美, 櫻井隆, 池谷裕二, 齋藤延人, 飯野正光
Organizer
第39回 日本分子生物学会年会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区)
Year and Date
2016-11-30
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[Presentation] 1型リアノジン受容体のS-ニトロシル化修飾による活性化と神経細胞死2016
Author(s)
三上義礼, 金丸和典, 大久保洋平, 柿澤昌, 村山尚, 柴田和輝, 小山隆太, 山澤徳志子, 赤羽悟美, 櫻井隆, 池谷裕二, 飯野正光
Organizer
第2回 日本筋学会
Place of Presentation
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)
Year and Date
2016-08-05 – 2016-08-06
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