2015 Fiscal Year Research-status Report
線条体と神経ペプチドとのクロストークによる新規疼痛制御システムの解明
Project/Area Number |
15K08233
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
仲田 義啓 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (40133152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 徳光 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (20346505)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | substance P / 神経障害性疼痛モデルラット / volume transmitter / 脳線条体 / リバースマイクロダイアリシス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】線条体は大脳基底核の主要な脳部位であり、運動制御に重要な役割を担っていることが知られている。線条体が疼痛を抑制的に調節している新たな役割に着目し、これまでにホルマリンやcomplete Freund’s adjuvant (CFA) のラット足蹠部投与による急性、亜急性疼痛モデルにおいて、脳線条体内へのsubstance P (SP) 持続投与が疼痛反応を緩和することを報告した。本年度は神経障害性疼痛モデルラットを用いて、慢性疼痛時における線条体SP神経系の疼痛伝達制御に対する役割を明らかにすることを目的とした。 【方法】Wistar系雄性ラット (6週齢、180から250g) を使用し、麻酔下において左坐骨神経を絹糸で部分的に結紮することで神経障害性疼痛モデル (partial sciatic nerve ligation (PSNL) model) を作製した。SP (0.4 μg/mL in aCSF) を一定時間持続的に投与 (1μ/min) した後、von Frey filament testにより疼痛閾値を測定した。 痛閾値を測定した。 【結果および考察】PSNL処置7、14日後における疼痛閾値の低下は、SPを60分間持続的に投与することより有意に回復した。また、PSNL処置7日後ラットにおけるSPによる回復効果はneurokinin 1 (NK1) 受容体遮断薬を併用持続投与することで拮抗された。一方で、SPを単回投与することでは疼痛閾値の低下に対する回復効果は認められなかった。以上の結果より、PSNLモデルにおいて、線条体へのSP持続投与はNK1受容体を介して疼痛緩和効果を示すことが明らかとなった。一方、その回復効果はSPの単回投与では見られなかったことより、線条体に対してSPが持続的に作用することが神経障害性疼痛に対する抑制的制御に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リバースマイクロダイアリシス法を用いて各種薬物を線条体内へ灌流持続投与することにより、脳内にトランスポーターを有しない神経ペプチドのサブスタンスPがvolume trnsimitter として拡散することにより遊離部位からの一定の組織内に濃度の変化が生じながら、つまり遊離部位から拡散する距離に応じてサブスタンスPの濃度が低濃度になることが予想されるのでリバースマイクロダイアリシス法について詳細に以下の検討を行った。
まず、本投与法の利点としては 1) 持続的に薬物を投与することが可能であること、2) 半透膜を介し薬物が浸透するため、投与時の薬液体積の影響を無視できることなどが考えられ、有益な薬物投与法であるが欠点としては組織中への投与濃度が明確でない点が挙げられる。 今回、invitro におけるマイクロダイアリシス法のサブスタンスPの回収率を詳細に検討した結果、 0.28 ± 0.04% であることから、脳組織への半透膜を介した移行は 1 時間あたり 1% 未満であることが明らかになった。以上のことから、人工脳脊髄液 中に溶解した薬物の約 1% が脳実質へ移行している可能性が考えられる。また、以前の報告によると、薬物の浸透範囲は マイクロダイアリシス プローブ の周囲 1 mm 以内に限局していることが明らかになり、平成28年度以降のin vivoの実験結果を考察する上で非常に重要な基礎結果であり平成28年度の実験の解析に大いに役立つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果より、マイクロダイアリシス法と高感度ラジオイムノアッセイ法および行動学薬理学を組み合わせ、ラットの線条体より各種の痛みに対応して遊離されるサブスタンスPの線条体を含め脳内とくに黒質での含有量を測定し、サブスタンスP作動性神経が各種の疼痛刺激に対してどのように活性化されているかを刺激後の時間経過とともに検討する。 また、同時にサブスタンスPの前駆体タンパク質のプロプレタキキニンの遺伝子をc-Fos遺伝子量とを比較定量することにより、疼痛刺激による脳内のタキキニン神経系の活性化を時間軸と疼痛の強度とともに解析する。
さらに、疼痛発生および抑制時に回収される還流液やマイクロダイアリシス法の逆モードを用いてSPを正常動物あるいは痛み誘発動物の線条体に投与し疼痛反応の強度、および持続時間の変化を解析する
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Causes of Carryover |
ほぼ予定どおりに予算を遂行したが、旅費の経費には予算が不足したので次年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、申請した研究経費を次年度使用額と合わせて予定どおり使用する。
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Research Products
(5 results)