2016 Fiscal Year Research-status Report
炎症時のリンパ管新生を増強する細胞特異的トロンボキサン受容体シグナルの解析
Project/Area Number |
15K08241
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
細野 加奈子 北里大学, 医学部, 助教 (80532556)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | リンパ管新生 / TP受容体 / 慢性炎症 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、リンパ管新生は間質液の排泄や代謝・免疫能の恒常性維持など様々な病態において注目されている。我々はこれまでに、炎症や腫瘍増殖時にプロスタグランジン(PG)E2がリンパ管新生を増強することを報告してきていたが、最近になり驚いたことに強力な血小板凝集作用や細動脈収縮作用が知られるトロンボキサンがリンパ管新生を増強することを見出した。一方で、腹膜炎時には腹水が貯留しその排液にリンパ管が大きく関与するが、腹膜炎の際にどのような細胞のTP受容体が役割をもつかは不明であることから、申請者はLPS誘発腹膜炎モデルを用い腹膜炎時のリンパ管新生を増強するトロンボキサン受容体(TP)シグナリングの役割を明らかとするため検討を進めている。 昨年度までの検討により、腹膜炎を惹起させた横隔膜ではCOX-2 やその下流に存在するトロンボキサン合成酵素TXSの発現上昇を確認し、TPノックアウト(KO)マウスでもリンパ管新生が抑制されることを明らかにしたが、さらにトロンボキサン合成酵素阻害薬やTP阻害薬の投与によってもリンパ管新生が有意に抑制されることが確認された。また、免疫組織化学的検討から腹膜炎を惹起させた横隔膜ではリンパ管周囲にCD3ε陽性細胞(T細胞)やCD11b陽性細胞(マクロファージ)の集積を顕著に認めていたが、TPKOではその集積が有意に抑制されることが確認できた。加えて、chrodronate lyposomeによるマクロファージ除去とanti- CD3抗体によるT細胞活性化阻害をそれぞれ行ったところ、いずれにおいてもリンパ管新生が有意に抑制されることが確認された。以上のことから、腹膜炎モデルにおけるリンパ管新生にはマクロファージとT細胞がリンパ管新生増強に関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、LPS誘発腹膜炎モデルを用いて集積細胞の機能的なsubpopulationの解析やリンパ管新生の司令塔細胞を特定するとともにTP受容体シグナルを介したリンパ管新生を制御する細胞種の同定を進めている。同時に、Creトランスジェニックマウスを用いたCre-loxPシステムによる細胞特異的TP受容体ノックアウトマウスの繁殖を行っているが、マクロファージ・好中球特異的TP受容体欠損マウスの繁殖は比較的順調に進んでいるものの、T細胞特異的TP受容体欠損マウスに関しては実験に供することが出来得るだけの雄性マウスの個体数確保が思うように進んでいないので、繁殖環境の改善等を試み繁殖を継続する。
|
Strategy for Future Research Activity |
LPS誘発腹膜炎モデルを用いてTP受容体シグナルを介したリンパ管新生を制御する細胞種の詳細な同定をさらに進めるとともに、骨髄移植マウスを作成して腹膜炎モデルでの骨髄由来細胞の役割評価を行い、リンパ管新生を制御する骨髄由来細胞の炎症性シグナルを特定、宿主側のTP 受容体の役割を確認する予定である。また、細胞特異的TP受容体ノックアウトマウスを用いてLPS誘発腹膜炎モデルを作成し、リンパ管新生を評価することにより、TP受容体シグナルを介したリンパ管新生を制御する細胞種を同定する。
|
Causes of Carryover |
次年度の研究遂行において、実験動物の購入および飼育費用、抗体購入費用が当初の予定以上になることが判明したため今年度の消耗品費を節約して予算を繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験動物の購入および飼育費用と抗体購入に使用する。
|
Research Products
(7 results)