2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性的低酸素環境において遺伝子発現を決定する選択的転写機構の解明
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15K08260
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素応答 / CREB / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素下で悪性化する表現型を示す乳がん細胞を材料として使用した。まず、乳がん細胞株MDA-MB231細胞からCREBを構成的にノックダウンした株(CREB-KD細胞)を樹立した。次に、コントロール細胞とCREB-KD細胞をそれぞれ低酸素環境で48時間培養した後に、発現が上昇、下降する遺伝子を、次世代シークエンサーを用いて網羅的に同定した。同定したこれらの遺伝子についてコントロール細胞とCREB-KD細胞を比較解析することで、慢性期の低酸素環境でCREB特異的に発現が誘導される遺伝子約1700個を明らかにした。次に、これらの遺伝子に関してgene ontology解析を実施したところ、その上位には細胞外マトリックス構築、血管新生の促進、細胞間接着などに関わるグループが認められ、低酸素下におけるCREB標的遺伝子とがん転移の相関が予想された。そこで、CREB-KD細胞をヌードマウスに移植したところ、肺への転移が顕著に抑制されることが明らかになった。したがって、慢性期低酸素でCREBはがんの悪性化に働く遺伝子群を主たる標的としていることが考えられた。本成果は、論文として発表した。さらに、CREBの標的遺伝子として得られた分子には、ERストレス応答に働くPERK, IRE1aが含まれていることが判明した。ChIP解析から、これらの遺伝子のプロモーター領域にはCREBが結合して、その発現を正に制御していることまでを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CREBの低酸素特異的な標的遺伝子の同定、ならびに、解析を進め、それらの機能別の分類を完了した。また、樹立したCREB-KD細胞をマウスに移植し、がんの悪性化解析を実施して、CREBのがん転移における役割を明らかにして、論文として発表した。これらを達成したことで、本研究計画中の、CREB標的遺伝子の網羅的な比較解析と、がんの悪性化におけるCREBの生理的意義の解析までを順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がん細胞株MDA-MB231細胞にCREBの活性化薬であるForskolin処理を施した試料を調製して、その時に発現誘導されるCREBの標的遺伝子を同定する。その結果を、他細胞におけるCREB標的遺伝子のデータベースと照合しながら、低酸素性の乳がんに特異的な標的と一般的な標的に分類する。次に、低酸素特異的な遺伝子、ならびに、本年度の成果で得られたERストレス応答に関与する標的遺伝子に主に着目して、低酸素特異的に誘導される分子機序の解明をプロモーター近傍に結合する核内因子の同定、ならびに、クロマチン構造の変化に着目しながら解析を進める。また、発現低下を示した遺伝子群にも焦点を当てて、上記と同様の手法を用いて、その発現制御機構の解析を進める。
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Causes of Carryover |
研究計画で外部機関への委託を予定していた次世代シークエンス解析を学内の共用利用施設を使用して自身で実施したために、当該経費を大幅に節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.遺伝子発現解析に必要な酵素、試薬の購入費用として使用する。2.ChIP解析・ウェスタンブロットに必要な抗体の購入費用として使用する。3.動物実験のためのマウスの購入・飼育施設使用料として使用する。4.国内、および、海外の学会で研究成果を発表するための旅費として使用する。5.研究成果を論文発表するための経費として使用する。
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Research Products
(3 results)