2015 Fiscal Year Research-status Report
睡眠制御薬の合理的開発に資する活性型/不活性型オレキシン受容体結晶構造の差分解析
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15K08268
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寿野 良二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60447521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 紀通 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10314246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 / GPCR / X線結晶構造解析 / 創薬 / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
<目的>GPCRは創薬において重要なターゲットと位置づけられている。本研究ではGPCRのひとつで睡眠に関わるオレキシン受容体の様々な反応状態の高分解能X線結晶構造解析を行い、シグナル伝達経路に関わる分子メカニズムを解明するとともに薬剤開発の重要な情報を得ることを目的とする。これには構造安定化変異体を用いたGPCR単体の構造決定とコンフォメーションを固定化する機能性モノクローナル抗体との複合体構造決定の2つの手法を用いて目標を実現する。特に共役するシグナル伝達因子を模倣する抗体との複合体構造解析により、薬剤の効果を含めたGPCRの分子機構の詳細な情報を得たい。
<27年度の成果>当年度の主な成果は選択的アンタゴニスト結合型のOX2Rの結晶構造を放射光とX線自由電子レーザーを用いて、それぞれ1.96A、2.4A分解能で決定できたことである。平成26年末にRosenbaumらのグループが2.5A分解能でOX2Rの非選択的アンタゴニスト構造を決定した。我々はこのコンストラクトを用いて、OX2R選択的アンタゴニスト結合型構造の決定に成功した。また、Rosenbaumらは最近OX1Rの選択的/非選択的アンタゴニスト結合型の構造を決定した。Rosenbaumらの結果と我々の結果を比較検討することで、OX2Rのリガンド選択性についての分子機構を明らかにすることができた。この結果について、現在論文投稿準備中である。 また、免疫不全マウスを用いてOX2Rの不活性型固定抗体の取得を試みたが、親和性の高い結晶構造解析に使用できるものが得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OX1RやOX2Rの活性型、不活性型の結晶構造を決定して、それらのリガンド選択性やシグナル伝達機構の解明を目的としている。 今年度はいくつかの成果が得られたので、順調に研究が進んでいると考えている。 ひとつにはOX2Rの選択的アンタゴニスト結合型で決定できたことで、OX2Rのリガンド選択性の分子機構を明らかにできた。また、2A分解能を超えるデータを取得できたことから、イオンについても詳細に議論することができ、OX2RのみならずClass A GPCRに共通の分子メカニズムについても情報が得られた。さらに新規の測定技術であるX線自由電子レーザーによるヒト膜受容体の構造を決定できたことで、今後の膜タンパク質についてのX線結晶構造解析に有効なツールを開発することができた。一年目に一定の成果が出せたので、この結果を元に今後もさらに研究を発展させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
OX1R, OX2Rの活性型、不活性型の構造決定による分子機構の解明が我々の目的であるが、世界的にはすでにOX1RとOX2Rの不活性型構造については選択的・非選択的アンタゴニスト結合型で構造が決定された。次の我々の課題は活性型構造の決定である。GPCRの活性型構造の決定は世界的に見ても例が少ないが、我々の持つ抗体作製技術と構造安定化変異体を駆使して、構造決定に向けて取り組んでいく。抗体については昨年度免疫不全マウスを用いた抗体作製で良好な結果が得られなかったが、免疫寛容の問題もありヒトGPCRの抗体は作成しづらいことが知られている。この問題を解決するために筑波大学の柳沢教授の研究室よりOX2Rノックアウトマウスを提供いただいたので、これを用いて再度抗体作製を行う。また、OX2Rには親和性の高いアゴニストが知られていないが、筑波大学で開発されたリガンドを提供していただき、これを用いる。得られた抗体とリガンドを用いて活性型OX2RのX線結晶構造解析を中心に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
成果を発表するために2016年2月にアメリカのコロラド州で行われるキーストーンという学会参加を予定し、予算を確保していた。抗体作製など研究計画の一部の進捗が芳しくなかったため、そちらに必要な物品を購入しなければならなくなった。その影響で学会参加の旅費が足りなくなる可能性が生じたため、急遽学会参加を取りやめた。その結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に学会発表のための旅費として予定していた予算であるので、28年度にこれまでの成果を発表する学会参加費に使用する予定である。
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