2016 Fiscal Year Research-status Report
睡眠制御薬の合理的開発に資する活性型/不活性型オレキシン受容体結晶構造の差分解析
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15K08268
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寿野 良二 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (60447521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 助教 (10314246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GPCR / X線結晶構造解析 / 機能性抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
<背景>「ナルコレプシー」は強烈な眠気の発作を主な症状とする脳疾患(睡眠障害)である。この疾患は時と場所を選ばず突然眠りに落ちてしまうため、例えば自動車運転中の居眠り事故を起こす危険性をはらんでいる。この疾患は日本では人口の0.16%罹患しており、これは世界平均0.05%と比較して大幅に多い。G蛋白質共役受容体(GPCR)の一種であるオレキシン受容体(OX1R, OX2R)は食欲や睡眠の制御を行い、特にナルコレプシーの発症に関わることを解明した。近年、オレキシン受容体の覚醒・睡眠制御における役割に注目が集まっており、薬剤開発に重要な因子であるオレキシン受容体の詳細な構造情報の取得が待たれている。 <目的>GPCRは創薬において重要なターゲットと位置づけられている。本研究ではGPCRのひとつで睡眠に関わるオレキシン受容体の様々な反応状態の高分解能X線結晶構造解析を行い、シグナル伝達経路に関わる分子メカニズムを解明するとともに薬剤開発の重要な情報を得ることを目的とする。これには構造安定化変異体を用いたGPCR単体の構造決定とコンフォメーションを固定化する機能性モノクローナル抗体との複合体構造決定の2つの手法を用いて目標を実現する。特に共役するシグナル伝達因子を模倣する抗体との複合体構造解析により、薬剤の効果を含めたGPCRの分子機構の詳細な情報を得たい。 <28年度の成果>昨年度、選択的アンタゴニスト結合型のOX2Rの結晶構造を放射光とX線自由電子レーザーを用いて、それぞれ1.96A、2.3A分解能で決定できたので論文投稿中である。また、昨年度良好な結果が得られなかった免疫不全マウスを用いたOX2Rの抗体の取得は、OX2R KOマウスを用いることによって達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はOX1RやOX2Rの活性型、不活性型の結晶構造を決定することを目的としている。現在までにOX2Rの不活性型の構造を決定できていること、立体構造認識抗体を取得できたことからプロジェクトは順調に進展している。一般に活性型GPCR構造は不活性型構造より、GPCRの動きが大きくなるので結晶化が難しいと考えられているが、立体構造認識抗体が得られたことで構造を安定化できると期待される。その観点から立体構造認識抗体が取得できたことは今後のプロジェクトの進展に有益である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の我々の課題は活性型構造の決定である。活性型についてはこれまで知られている研究では単にアゴニストが結合した状態のものが構造決定されている。しかし、実際GPCRの活性化状態はヘテロ三量体Gタンパク質、特にGαと相互作用している状態と言える。これまでの研究では抗体やGタンパク質変異体、ヘテロ三量体Gタンパク質とGPCRの共結晶構造が得られているので、我々もまずはOX2Rを用いて複合体構造の決定を目指す。まずは抗体を用いてOX2Rの活性型構造解析を行う。抗体は昨年度までに得られたものの中からスクリーニングを行い筑波大学から譲渡していただいたアゴニストを用いて、複合体を形成させて結晶化スクリーニングを行う。また、ヘテロ三量体Gタンパク質やGタンパク質変異体の発現、精製系を立ち上げ、OX2Rとの複合体形性実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
抗体作製に予算を確保していたが、想定以上に良好にプロジェクトが進展したためさらなる抗体作製は行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
活性型OX2Rの構造決定のために抗体以外にG蛋白質との複合体構造の決定を目指す。したがって、G蛋白質精製のためのコンストラクト作製、発現、精製のための必要物品に使用する予定である。
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[Presentation] High-resolution crystal structures of human orexin 2 receptor bound to a selective antagonist EMPA2016
Author(s)
Ryoji Suno, Kanako Terakado Kimura, Takanori Nakane, Kunio Hirata, Keitaro Yamashita, Junmei Wang, Takaaki Fujiwara, Yasuaki Yamanaka, Dohyun, Im, Shoichiro Horita, Hirokazu Tsujimoto, Maki S. Tawaramoto, Takatsugu Hirokawa, Masaki Yamamoto, Daniel M. Rosenbaum, So Iwata, Tatsuro Shimamura, and Takuya Kobayashi
Organizer
内藤カンファレンス
Place of Presentation
サッポロ シャトレーゼ ガトーキングダム
Year and Date
2016-10-04 – 2016-10-07
Int'l Joint Research
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