2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08275
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松田 友和 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20570344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カゼインキナーゼ2 / C/EBPβ / 膵β細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、膵β細胞量に対して小胞体ストレスが負の影響を及ぼすことを明らかにしてきた。最近、casein kinaes2(CK2)阻害剤が抗癌剤として注目を集めている。CK2阻害剤は癌細胞に対しては、増殖抑制作用やアポトーシス誘導作用を有するにも関わらず、正常細胞にはそのような作用を発揮しないというという特徴を持っている。その機序として、癌細胞と正常細胞との小胞体機能の違いが指摘されている。CK2阻害剤は、糖尿病性腎症に保護的作用することや、白色脂肪細胞のbrowning化を促進することが報告されており、糖代謝疾患に対するCK2阻害剤の有用性も期待されている。そこで、膵β細胞における小胞体ストレスに対するCK2の役割について解析した。 膵β細胞株であるMIN6細胞において、通常状態ではCK2αは主に核に、CK2βは主に細胞質に分布していたが、小胞体ストレス関連分子であるC/EBPβを強発現したMIN6細胞では、C/EBPβとCK2α,CK2βは、ともに核において共局在していた。また、GST-C/EBPβとrecombinant CK2を用いたPull-down assayより、C/EBPβとCK2はin vitroで直接結合することが示された。MIN6細胞において、CK2βを欠損させると、小胞体ストレスにより誘導されるC/EBPβ, CHOP, p-c-junなどのunfolded protein response(UPR)関連分子の発現は抑制されていた。膵β細胞特異的C/EBPβトランスジェニック(TG)マウスにCK2阻害剤であるemodinを投与したところ、随時血糖や体重には有意な差を認めなかったが、空腹時血糖の有意な改善およびIntraperitoneal Glucose Tolerance Test(IPGTT)における耐糖能の改善を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)カゼインキナーゼ2がC/EBPβの発現量を制御する機序、2)糖尿病モデルマウスの糖代謝関連組織におけるカゼインキナーゼ2の発現や活性、3)カゼインキナーゼ2が膵β細胞機能に及ぼす影響、4)カゼインキナーゼ2がマウスの耐糖能に及ぼす影響、の4点を明らかにしていくことを予定していた。そのうち、1)3)4)に関しては、概ね予定通り進行している。2)に関しては、カゼインキナーゼ2のマウスの組織における活性を評価することが困難なため、未解決であるが、発現量などは現在評価を進めている。また、カゼインキナーゼ2が、小胞体ストレスにより細胞質から核内へ集積することを新たに見出している。糖代謝関連組織において、細胞内ストレスによりカゼインキナーゼ2の作用が変化する要因になっていると考えている。以上より、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
1)カゼインキナーゼ2がC/EBPβの発現量を制御する機序 現在までに、カゼインキナーゼ2を阻害することで、C/EBPβの発現を抑制することを明らかにした。また、質量解析法を用いて、C/EBPβの発現量・安定性に関与する新規リン酸化部位を同定しており、同部位がカゼインキナーゼ2により修飾されるのかを検討していく。代表者は、これまでC/EBPβが糖代謝に及ぼす影響に関する知見を集積させており、カゼインキナーゼ2がC/EBPβの発現量に及ぼす影響を明らかにすることで、それ以後の検討課題であるカゼインキナーゼ2が糖代謝に及ぼす効果の機序の1つを明らかにさせる予定である。2)糖尿病モデルマウスの糖代謝関連組織におけるカゼインキナーゼ2の発現や活性 マウスの膵β細胞におけるカゼインキナーゼ2の発現量は、糖尿病モデルマウスでは増加していると考えている。さらに細胞実験の結果から、モデルマウスではカゼインキナーゼ2が核に集積することで、活性を上げているのではないかと推測している。今後は、カゼインキナーゼ2の核移行の機序なども検討していく予定である。 3)カゼインキナーゼ2が膵β細胞機能に及ぼす影響、4)カゼインキナーゼ2がマウスの耐糖能に及ぼす影響 カゼインキナーゼ2を欠損させると、膵β細胞の細胞株であるMIN6細胞のC/EBPβをはじめとする小胞体ストレスシグナルが軽減することを明らかにした。今後は、カゼインキナーゼ2の欠損が細胞のviabilityにどのように影響するのかを検討していく予定である。また、カゼインキナーゼ2阻害剤であるemodinが膵β細胞特異的C/EBPβトランスジェニックマウスに及ぼす影響を、血糖のみならず膵β細胞量や細胞内シグナルも含めて、さらに精査していく予定である。
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