2016 Fiscal Year Research-status Report
ニーマン・ピックC1ライク1依存性コレステロール輸送におけるORP10の役割
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15K08277
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
二宮 治明 鳥取大学, 医学部, 教授 (80212124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Niemann-Pick C1 Like1 / コレステロール / 酸化ステロール結合蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
Niemann-Pick C1 Like1 (NPC1L1) は小腸上皮細胞と肝細胞に特異的に発現し、細胞表面から輸送小胞を経て小胞体へコレステロールを輸送するが、分子レベルでの輸送機序には未解明な点が多数残されている。一方、ORPファミリーは、OSBP とそのホモログ (ORP1~11) 計12種類の蛋白質を含み、その各々が特定の脂質のセンサーまたはキャリアーとして働くことが明らかになりつつある。これまでに、HEK細胞での発現系を用いて、ORP10の発現を過剰にする、または抑制するとNPC1L1の細胞内局在が変化すること、さらにNPC1L1とORP10が複合体を形成することを見いだした。次に、種々の ORP10 truncated constructs と NPC1L1 の共免沈実験を行い、ORP10のpleckstrin homology domain が2つの蛋白質の複合体形成に必要であることを見出した。さらに、この蛋白質複合体にはクラスリン被覆小胞とのアダプター蛋白質であるNumbが含まれていることがわかった。ORP10のpleckstrin homology domainはNumbとの結合には不要であり、ORP10のカルボキシル側の配列がその結合を担う。HEK細胞において、siRNA によりORP10をノックダウンすると、NPC1L1とNumb との結合が抑制された。これらの結果は、ORP10がNPC1L1 とNumb をつなぐリンカーとして働くことを示唆する。また、NPC1L1との共免沈、Numb との共免沈のいずれにおいてもN254 とD254アイソフォームの結果に明らかな違いは見いだせず、ORP10/N254とD254アイソフォーの機能的な違いはなお検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPC1L1/ORP10蛋白質複合体にNumbが含まれていることを証明できたことは重要な進展である。この複合体形成の機序として、ORP10のpleckstrin homology domainがNPC1L1との結合に必要であるのに対して、そのカルボキシル側の配列がNumbとの結合を担うことを示すことができた。さらにHEK細胞においてsiRNA によりORP10をノックダウンすると、NPC1L1とNumb との結合が抑制された。これらの結果は、ORP10がNPC1L1 とNumb をつなぐリンカーとして働くことを示唆している。これまでにORPファミリーの一つであるOSBP (oxysterol-binding protein)が細胞膜直下で MAPKカスケードの scaffold として働くことが報告されているが、本研究の成果はこれに匹敵する新知見である。一方ORP10/N254とD254の機能的な違いはなお検討中である。日本人高LDL血症患者のゲノムにおいて、254番目がアスパラギン酸であるORP10/D254 をコードするアリールは、アスパラギンであるN254をコードするアリールよりも頻度が高い。NPC1L1との共免沈、Numb との共免沈のいずれにおいてもN254 とD254アイソフォームの結果に明らかな違いは見いだせず、これらの蛋白質との結合活性に差はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の目標は、ORP10がNPC1L1とNumb をつなぐリンカーとして働くことを内因性の蛋白質の結合実験により証明することである。これまでにHepG2細胞がこれらの3種の蛋白質を内因性に発現していることを確認しているので、この細胞を用いて共免沈実験などを行う。第二の目標は、NPC1L1/ORP10蛋白質複合体に含まれる他の蛋白質の検索を行い、この複合体の構造・機能をさらに詳細に明らかにすることである。この目的のためにはこの複合体をトリプシン処理し、産生されるペプチドを質量分析により網羅的に同定することを計画している。これらの生化学的解析とは別に、ORP10/N254とD254アイソフォームの機能的違いについては、このアミノ酸が分子のヒンジ領域に存在することに着目して、FRET(fluorescence resonance energy transfer)により分子の“曲がりやすさ”の比較を行う予定である。この目的のために、各々のアイソフォームのN末端側にGFP (green fluorescent protein)を、C末端側にRFP (red fluorescent protein)をつないだコンストラクトを作製した。これらの研究を通して、NPC1L1依存性コレステロール輸送におけるORP10の役割をさらに詳細に解明したい。
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Research Products
(1 results)