2015 Fiscal Year Research-status Report
新規中枢神経系形成不全性疾患:滑脳症・小脳症が同時に発症する分子機構の解明
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15K08283
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 明月 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (60740404)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経幹細胞の増殖 / 神経細胞の遊走 / 滑脳症・小脳症 |
Outline of Annual Research Achievements |
カタニンのサブユニットであるp80の変異が滑脳症と小脳症の特徴を併せ持つ先天性中枢神経形成不全を発症させることが報告されたが、その発症機構に関してはほとんど明らかにされていない。そこで、本研究課題では、カタニンp80の変異がどのようにして、このような重い中枢神経形成不全を引き起こすかを明らかにすることを目指して研究を進めてきた。 1.細胞におけるカタニンp80の局在を調べたところ、細胞質のみならず細胞核にも局在していることが分かった。カタニンp80の核移行シグナルを決定するため、いくつかのプラスミドのコンストラクトと滑脳症・小脳症(microlissencephaly)の患者から見つかった4つの変異体を用いて、N末端の1~56アミノ酸配列上に核移行のシグナルが配置していることを決定した。 2.液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて、カタニンp80が神経細胞遊走に関わる細胞質ダイニンと細胞分裂の制御因子であるNuMAと相互作用することが分かった。また、分裂中のヒト細胞におけるカタニンp80の細胞内局在を調べてみると、NuMAと同様な細胞内局在を示していることから、細胞増殖にカタニンp80が深く関わっていることを判明した。 3.微小管ネットワーク再編におけるカタニンp80の機能を調べ、神経細胞遊走に関わる細胞質ダイニンと細胞分裂の制御因子であるNuMAと一緒に微小管のアスター形成に必須であることを明らかにし、カタニンp80が細胞分裂における紡垂体形成に関与することを解明した。 4.これらの研究成果に基づいて、平成28年度にin uteroの解析を行う予定であったが、今年度の研究が順調に進み、予定より半年も早く成果が出たため、平成28年度に行う予定であったin uteroの研究を半年くらい前倒しにして条件検討のための予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に実施する予定であったin vitroとin vivoにおけるカタニンp80の機能解析が予定より半年くらい早く成果が出た。これらの結果を基に、平成28年にはin uteroにおけるカタニンp80の機能解析を行う予定だったのが、半年くらい前倒しにして条件検討のための予備実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成27年度の後半に行ったin uteroの予備実験の結果を基に、in uteroにおけるカタニンp80の機能解析を行う。In uteroでマウス胎児脳に遺伝子導入後、脳組織のスライス培養でのカタニンP80の機能解析。(1)平成27年度の引き続き、In uteroでマウス胎児脳にカタニンp80とNuMAのsiRNA及び蛍光標識カタニンp80とNuMAを用いてマウス胎児E12を基準に導入し、神経幹細胞の増殖・分化における影響を細胞分裂マーカーであるKi67、PH3、P27とアポトーシス細胞のマーカーCasepase 3などを用いて詳細に解析する。(2)カタニンp80とNuMAのsiRNA及び蛍光標識カタニンp80とNuMAを用いてマウス胎児E14を基準に導入し、神経細胞移動への影響をマウス胎児E18を基準に解析する。 2.滑脳症・小脳症患者由来の神経前駆細胞(海外共同研究者より提供)を用いて滑脳症と小脳症の原因である神経細胞遊走とアポトーシスへの影響をライブセルイメージングでそれぞれ解析する。 3.本申請課題を進めているところ、海外共同研究者であるReversade博士がもう一つのmicrolissencephalyの原因遺伝子WDR62を発見した。WDR62は、p80と同様にN末端にWD40ドメインを持っている。構造上の類似性からWDR62もカタニンp80と同様に細胞質ダイニン、NuMAと相互作用することをin vitro生化学実験で確認した。大変面白いことに、微小管との相互作用を確認したところ、カタニンp80、細胞質ダイニン、NuMAを微小管溶液と混合させると、きれいにアスター構造を作るのに対して、WDR62、細胞質ダイニンとNuMAはアスター構造を作らなかった。これらの結果は、p80とWDR62が細胞周期の紡垂体形成に異なった機構で関わっていることが考えられる。これを明らかにするために、本来の研究計画を一部変更して、細胞周期のM期におけるp80、WDR62とNuMAの影響をライブセルイメージング法で明らかにする。
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