2016 Fiscal Year Research-status Report
新規中枢神経系形成不全性疾患:滑脳症・小脳症が同時に発症する分子機構の解明
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15K08283
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 明月 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (60740404)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | microlissencephaly / 微小管ネットワーク / 神経幹細胞の分裂 / 神経細胞の遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、滑脳症と小脳症の特徴を同時に併せ持つ小脳滑脳症(microlissencephaly)を発症させる原因遺伝子カタニンp80の機能解析をin vitroと in vivoで行なった。小脳症と滑脳症が同時に発症することから、神経幹細胞の分裂と神経細胞の遊走に共通する領域が存在することに注目して研究を進め、カタニンp80がNuMAと細胞質ダイニンを介して中心体とその周辺で行なわれている微小管ネットワークを制御することを明らかにした。マウス繊維芽細胞におけるカタニンp80の発現をsiRNAでノックダウンさせたところ、多極の紡錘体形成や中心体の数と形状の異状が確認された。この異状はNuMAをノックダウンさせた細胞でも同様で、両者の欠損がさらに異状の程度が増強し、機能的なつながりがあることが示唆された。また、in uteroでマウス胎児脳におけるカタニンp80とNuMAをノックダウンさせると神経幹細胞の分裂異状と神経細胞への分化促進及び神経細胞遊走の障害が確認された。さらに、microlissencephaly患者由来の神経iPS細胞を用いた解析から、カタニンp80の変異が神経幹細胞分裂時の紡錘体の形成とその形態維持に影響を与えると同時に神経細胞の遊走を著しく抑制することが明らかになった。一方、in vitroの微小管挙動解析実験ではカタニンp80、NuMAの組み替えタンパンク質と精製細胞質ダイニンが微小管をアスターに形成させることが確認できたが、患者由来のカタニンp80の変異体はその機能が失っていた。これらの結果から、カタニンp80はNuMA、細胞質ダイニンを介して中心体及びその周辺での微小管ネットワークの再編を制御することにより神経幹細胞の分裂と神経細胞遊走に関わることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に於いては、マウス胎児脳を用いたin uteroの解析を行い、siRNAによるカタニンp80とNuMAのノックダウンが神経幹細胞の分裂異常と分化を促進、及び神経細胞遊走に異常をもたらすことを明らかにした。また、microlissencephaly患者由来の神経iPS細胞を用いた解析から、カタニンp80の変異が神経幹細胞の分裂時の紡錘体の形成と維持、神経細胞の遊走に影響を与えることが分かった。組換えカタニンp80、NuMAと精製細胞質ダイニン、チューブリンを用いたin vitro微小管挙動解析実験では、カタニンp80がアスターの形成とその形態維持に必須であることを証明した。これらの結果は、カタニンp80がNuMAと細胞質ダイニンを介して中心体及びその周辺における微小管ネットワークの再編を制御しており、カタニンp80の変異は微小管再編の制御機構の破綻につながり、神経幹細胞の分裂と神経細胞の遊走に異常をもたらすことが明らかとなった。面白いことに、カタニンp80の微小管束化機能がNuMAにより解消されることが新たに明らかとなった。細胞核と中心体を細胞の状態に応じてシャトルするこの二つタンパンク質は、微小管ネットワーク再編へのユニークな機能を明らかにすることができた。これらの研究成果は、すでに学術論文にまとめてScientific Reports誌に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のこれまでの研究と本研究プロジェクトから、滑脳症の原因遺伝子LIS1とmicrolissencephalyの原因遺伝子カタニンp80がともに細胞質ダイニンの制御因子であり、微小管上における細胞質ダイニンの運動活性と細胞内局在を制御することを明らかにした。これらの研究成果の発展として、LIS1が神経細胞内に於いて“荷台”となる特殊な微小管フラグメント(PALM画像で確認された長さは~1 μm)上に細胞質ダイニンを可逆的に固定することで輸送複合体を形成し、アダプター因子mNudCとキネシンによって順向性に運ばれることを明らかにした。また、結紮したラットの大腿神経を用いたLC MS/MSの解析と電子顕微鏡法を用いた構造解析からこの“荷台”となる特殊な微小管フラグメントにはパーキンソン病の原因遺伝子であるα-Synuclein (αSyn)が結合していて、さらにin vitroでαSynが選択的に14本のプロットフィラメント(protofilaments, 14-pfs)で形成された微小管に結合することを発見した。これらの結果から、“荷台”となる特殊な微小管フラグメントは14-pfsで重合された動的微小管であることが示唆され、unconventional微小管と名づけた。これらの結果を基に、ラット以外の大型動物である犬や豚及びヒトの坐骨神経における動的unconventional微小管とそれに結合する微小管結合たんぱく質をLC MS/MSで詳細に解析し、体の大型化に伴う神経軸索内の物質輸送への進化を生化学的手法と構造学的手法で解析を行う。また、細胞質ダイニンの制御因子であるLIS1とカタニンp80が神経軸索内輸送への関わりを解析する。
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[Journal Article] Katanin p80, NuMA and cytoplasmic dynein cooperate to control microtubule dynamics2017
Author(s)
Jin M., Pomp O., Shinoda T., Toba S., Torisawa T., Furuta K., Oiwa K., Yasunaga T., Kitagawa D., Matsumura S., Miyata T., Tan T., Reversade B. and Hirotsune S.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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