2015 Fiscal Year Research-status Report
肝臓におけるトランススルフレーションによるシステイン取込みと硫化水素の役割の解明
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15K08294
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
藤井 順逸 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00222258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉橋 敏裕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00596570) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グルタチオン / システイン / 肝障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の抗酸化応答の際に中心的役割を担っているグルタチオンや、蛋白質の合成に必要なシステインの細胞内供給経路について、酸化型システイン(シスチン)の取込みに働くxCT欠損マウスを用いて検討を行なっている。 xCT欠損マウスと野生型マウス肝臓から肝細胞を単離して初代培養を行なったところ、xCT欠損線維芽細胞は培養開始後2~3日で死滅するが、肝細胞はほぼ正常に培養できたことから、xCTの依存度が低いことが示唆された。 健常マウスにおけるxCTの発現は胸腺や一部の中枢神経に限られており、xCT欠損マウスは正常に発育し顕著な表現型を示さない。しかし、アセトアミノフェン投与により肝障害を誘導するとグルタチオンの枯渇を招き、それを代償するために野生型マウスではxCTの発現誘導が起こる。アセトアミノフェンを投与したxCT欠損マウスと野生型マウスを比較すると、xCT欠損マウスで生存率が低下し、酸化ストレスに対して脆弱であることが分った。xCTのほかに、肝臓ではメチオニンからのシステイン合成に関わるトランススルフレーション経路が働くことが知られている。トランススルフレーション経路阻害剤の単独投与はマウスの生存に影響を与えなかったが、アセトアミノフェン投与によって生存率が著しく低下し、xCT欠損ではさらに強い障害が認められた。この結果は、健常マウスではトランススルフレーション経路が主要なシステイン供給経路となっているが、酸化ストレスなどによってグルタチオンの必要量が増した場合にはxCTが誘導されて、システイン供給を補っていることを示している。 薬剤やアルコールの過剰摂取は酸化ストレスを亢進し、肝障害をもたらすことから、グルタチオンの材料となるシステインの供給が重要なため、初代培養肝細胞を用いた検討によりシステイン供給経路の詳細について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の倉橋は2016年10月に異動となり、本研究を継続できなくなったが、所属する大学院生ほかの協力が得られ、以下のように予定していた研究はほぼ順調に進んでいる。 xCT欠損マウスと野生型マウス肝臓から肝細胞を単離して初代培養を行い、野生型マウスの培養肝細胞ではxCTの発現誘導が起こること、しかしxCTがなくともほぼ正常な状態を保つこと、などを明らかにしている。 マウス個体を用いた解析も行い、xCT欠損マウスはアセトアミノフェンに感受性が高く、トランススルフレーション経路の阻害により、障害が増強することなどを明らかにしている。 硫化水素については、論文報告にある検出系に基づいた方法を試みたがうまく行かず、別の方法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
xCT欠損マウスと野生型マウス肝臓から樹立した初代培養養肝細胞を用いて、トランススルフレーション経路の阻害効果を調べる。 培養細胞は体内とは異なり常に高い濃度の酸素にさらされているため、マウス個体を用いた検討との違いについて比較検討する。 硫化水素には肝臓保護作用があるため、トランススルフレーション経路の阻害がシステイン取込み抑制によるグルタチオンの産生低下が原因なのか、それとも硫化水素の生成抑制による肝臓保護作用の低下が原因なのか、解明する。 またトランススルフレーション経路阻害剤に加えて、硫化水素ドナー化合物を用いて、肝障害が軽減されるかどうか調べる。得られた結果から、肝臓におけるシステイン代謝と硫化水素の細胞保護作用について総合的に評価し、他の臓器や各種病態における役割についても考察する。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Overexpression of Peroxiredoxin 4 Induces Adaptive Intestinal Lipid Metabolism Associated with Suppressive Nonalcoholic Steatohepatitis in a Dietary Mouse Model.2016
Author(s)
Aya Nawata, Hirotsugu Noguchi, Yuichi Mazaki, Toshihiro Kurahashi, Atsunori Nabeshima, Ke-Yong Wang, Satoshi Kimura, Hidetaka Uramoto, Kimitoshi Kohno, Hatsumi Taniguchi, Yoshiya Tanaka, Junichi Fujii, Yasuyuki Sasaguri Toshiyuki Nakayama, and Sohsuke Yamada.
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Journal Title
PLoS One
Volume: e0152549
Pages: e0152549
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] On the cysteine supply for glutathione synthesis in the liver under oxidative insult.2015
Author(s)
Junichi Fujii, Toshihiro Kurahashi, Takujiro Homma, Jaeyong Lee, Eun Sil Kang, Shinji Hamashima, Atsunori Nabeshima, Sohsuke Yamada, Toshiyuki Nakayama, and Hideyo Sato.
Organizer
7th Biennial Meeting of Society for Free Radical Research-Asia (SFRR-Asia)
Place of Presentation
Chiang Mai, Thailand
Year and Date
2015-11-29 – 2015-12-02
Int'l Joint Research
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