2015 Fiscal Year Research-status Report
がん抑制遺伝子(PITX1)の機能解析による細胞老化分子メカニズムの解明
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15K08304
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
久郷 裕之 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40225131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん抑制遺伝子 / 細胞老化 / テロメレース / TERT / PITX1 / IL-6 / IL-8 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先行研究よりがん抑制遺伝子PITX1によって制御される新規因子として可能性が示唆されたIL-8遺伝子について、直接的な制御を追求する実験を行った。具体的には、PITX1の過剰発現系によるIL-8の発現動態解析を行った。細胞には293T, HeLa細胞に加え、ヒトメラノーマ細胞株であるA2058細胞用いて、PITX1の過剰発現ベクターの導入後、リアルタイムRT-PCR法を用いた遺伝子発現解析を行った。その結果、PITX1の発現上昇に伴って、コントロール群と比較し、HeLaでは250倍、293Tでは3倍、A2058では25倍と、異なる3種の細胞において共通してPITX1発現誘導によるIL-8の発現上昇が確認された。また、A2058細胞においはPITX1の安定発現株を樹立、同様にIL-8の発現動態解析を行った結果、PITX1の発現量に比例してIL-8遺伝子の発現量が上昇していたことから、これらの遺伝子間に相互作用があることが強く示唆された。加えて、先行研究より関連が示唆されたIL-6遺伝子の発現量についても同様にA2058細胞株を用いて解析を行ったところ、PITX1の発現上昇に伴って、コントロール群と比較して260倍もIL-6遺伝子の発現上昇が認められた。これらの結果より、PITX1の新規機能としてIL-6、IL-8の産生制御の可能性が示唆された。IL-6およびIL-8は、SASP(Senescence Associated secretory Phenotype)現象において老化細胞が分泌する主要な炎症性サイトカインとして報告され、さらに発がんとの関連も示唆されている因子であることから、今後は得られた知見を基に、PITX1の新規機能の可能性として、老化細胞おける炎症性サイトカインの分泌に着目し、SASP制御機構における役割について検討を行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間において、PITX1によって制御される新規の遺伝子としてSASPの主要因子であるIL-8に加えて、IL-6の可能性を直接示す結果が得られたことから、本研究の目的であるPITX1とSASP制御機構の関連性を解明する上で骨子となる知見を得ることができたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPITX1によるIL-8,IL-6の産生誘導経路がSASP制御機構の一端を担うか否か、詳細な解析を行う。具体的にはSASP の制御因子としてp16やPKD1が報告されていることから、これらの分子経路へ直接的な関与について検討を行う。また、PITX1コンディショナルノックアウト(CKO)マウスの作製:時期および組織特異的 PITX1-CKO マウスを作製し、個体および組織内における PITX1 の老化制御の役割を解明する。マウスの作製が予定通り進まない場合は、正常細胞株IMR90を用いた細胞老化モデルによってin vitroの系により評価を行う。加えて、PITX1 の 発現制御あるいは相互作用する分子群の同定および機能解析を行い、PITX1自身を制御しうる分子を探索し、PITX1を軸とした炎症性因子の発現誘導と細胞老化およびSASP現象の全体像を明らかにしたい。
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Research Products
(7 results)