2016 Fiscal Year Research-status Report
アンジェルマン症候群責任遺伝子産物Ube3aの新たな転写制御機構に関する研究
Project/Area Number |
15K08305
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古米 亮平 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (30450414)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 神経科学 / 生理学 / 脳神経疾患 / 行動学 |
Outline of Annual Research Achievements |
重篤な発達障害をおこすアンジェルマン症候群はUbe3aというユビキチン化酵素の変異や欠失でおこる。Ube3aの標的は数多く知られているが、神経細胞のシナプスにおける特定蛋白質の分解でアンジェルマン症候群の病態が説明できるとされている。一方、病態との関連は全く不明であるが、Ube3aは核内でp53や核内受容体などの転写因子を介して転写に直接関わることがしられており、実際に神経細胞内では、Ube3aは核内に主に局在する。我々は、アンジェルマン症候群の病態にはUbe3aの核内機能、特に転写制御機構が関与する可能性があると考えた。 Ube3aの欠損したアンジェルマン症候群モデルマウス及び野生型マウスの脳海馬を用いて、マイクロアレイによるトランスクリプトーム解析の結果、約300個の遺伝子の発現に有意な変化があることがわかり、Ube3aによる広範囲な転写レベルでの制御機構が示唆された。またパスウェイ解析の結果、これらの遺伝子群には免疫関連遺伝子が多く存在することを明らかにした。さらに、それら変化のあった遺伝子群の上流因子としてIRF (Interferon Response Factor)といウイルス感染に対する免疫応答を担う転写因子を同定し、結合実験、レポーターアッセイからIRF2がUbe3aのメインターゲットであることを明らかにした。すなわち、IRF2はUbe3aと共にIRFファミリーの転写活性を抑制するタンパク質として機能すると考えられる。 IRF2の神経系における役割を明らかにするためにIRF2ノックアウトマウスを用いた解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロータロドテストにおいてUbe3am-/p+マウスは野生型マウスと比較して加速するロッド上を歩ける時間が短いこと、またfoot printテストにおいて歩行時の手足の角度(paw abduction)が野生型マウスよりも広いことが報告されている。昨年度行ったロータロッドテストから、IRF2ノックアウトマウス も野生型マウスと比較して加速するロッド上を歩ける時間が短いという結果を得ており、IRF2ノックアウトマウスは小脳由来の運動機能に異常がある可能性が考えられた。 そこでIRF2ノックアウトマウスに関してUbe3am-/p+マウスと同様のfoot printテストを行った。ノックアウトマウスと野生型マウスで歩行時の手足の角度の比較を行ったが有意な差は認められなかった。 またIRF2ノックアウトマウスの小脳の形態的解析を行った。小脳の各葉の数、分子層の厚さを解析するため、マウスの脳組織切片を用いてニッスル染色を行ったが、これらの形態に異常は認められなかった。プルキンエ細胞の樹状突起の形態を解析するため、カルビンジン抗体を用いて脳組織切片の免疫組織染色を行った。組織染色の結果、ノックアウトマウスではプルキンエ細胞の樹状突起の伸長に異常がある可能性が考えられた 。
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Strategy for Future Research Activity |
行動テストの網羅的解析を行うとともに、小脳の形態学的解析を継続する。免疫染色では樹状突起の先端までを定量的に測定することが難しいため、クロム酸銀を用いたゴルジ染色を行う。またプルキンエ細胞の樹状突起上のスパインの数や形態の解析を試みる。
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