2015 Fiscal Year Research-status Report
粘膜治癒を目指したIBD治療におけるWnt5aペプチドの有用性に関する検討
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15K08313
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
内山 和彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50298428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00305575)
高木 智久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70405257)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Wnt5a / IBD / YAMC細胞 / DSS腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎やクローン病を代表とする炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:以下IBD)の治療効果の目標は臨床的寛解ではなく、内視鏡的に確認する「粘膜治癒」が重要であり粘膜治癒が得られれば、臨床的寛解の維持、手術率の低下につながることが示されている。これまで我々は大腸筋線維芽細胞由来の細胞培養液からの分析で、Wnt5a蛋白の全長ではなく、その一部、31個のアミノ酸からなるペプチド(Wnt5aペプチド)が、大腸上皮細胞の再上皮化を促進する活性を有していることを発見している。平成27年度における研究実績は以下となっている; 1) Wnt5aペプチドによる細胞内シグナルの検討:シカゴ大学Eugene B Chang教授より供与された正常マウス大腸上皮細胞(Young Adult Mouse Colonic epithelial cell: YAMC細胞)を用いて検討した。TOPflashによって、βカテニンの活性化を検討したが、Wnt5aペプチドによって刺激を受けたYAMC細胞はβカテニンの活性化が認められた。 2) 筋線維芽細胞におけるWnt5a誘導因子:IBDの病態においてはTNF-αが重要な役割をしていることが分かっているが、筋線維芽細胞(Vanderbilt University Pericrypt Fibroblast: VUPF-1細胞:シカゴ大学Eugene B Chang教授より供与)にTNF-αを作用させたところ、Wnt5a mRNA発現が有意に上昇した。 3) マウスを用いた動物実験:DSS腸炎モデル:3%DSS水を7日間自由飲水させた後、Wnt5aペプチド(10μg/body)を7日間腹腔内投与した。その結果、体重減少、disease activity index(DAI)はWnt5aペプチド投与群で有意に改善し、Wnt5aペプチドのDSS腸炎進展抑制効果が証明された。遺伝子発現の詳細に関しては現在検討中。 4) ヒトの検体を用いた臨床研究:現在、IBD患者の腸管粘膜生検検体を収集中であり、詳細な解析はまだおこなっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞を用いた検討では、細胞内シグナルの詳細な検討を次年度に予定しているが、TOPflashを用いたWnt5aペプチドのβカテニンの活性化は既に検討済みであり、本年度の目標はおおむね達成したと考えられる。 筋線維芽細胞からのWnt5a発現の誘導に関しては現在TNF-αによるものにとどまっており、今後各種サイトカイン、増殖因子等で検討予定である。 マウスを用いた検討では、DSS腸炎を用いた実験は終了しており、ペプチドが腸炎進展抑制に有用であることは証明している。検体も冷中保存しており、今後遺伝子発現等、詳細な検討を待つのみである。 ヒトの腸管上皮を用いた検討でも同様に現在検体を収集しており、次年度に詳細な遺伝子発現を検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討では、Wnt5aペプチドのβカテニン活性誘導、筋線維芽細胞からのWnt5a発現誘導に関して良好な結果を得られており、今後さらなる詳細なシグナル機構、発現誘導機構の解明を考えている。また、マウスを用いた検討でもWnt5aペプチドの腸炎抑制機構が証明されており、腸管上皮の遺伝子発現、免疫染色などを用いて、そのメカニズムの詳細を検討していく。最終的には将来的な臨床応用を視野にいれたWnt5aペプチドの抗炎症作用、腸管上皮再上皮化促進作用のメカニズムを解明を目的として研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
予定していたWnt5aペプチド購入(合成依頼)が、予想以上に良好な結果であったため、実験の進行具合で平成27年度における実験では必要ではなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Wnt5aペプチドは次年度に購入予定。合成価格としても次年度使用額と同等であり、購入を計画している。
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