2015 Fiscal Year Research-status Report
新奇NOX4-ROS依存転写抑制複合体によるMMP-9発現とがん転移抑制の可能性
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15K08317
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | NOX4 / MMP-9 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで細胞接着斑-核両局在性のアダプター分子HIC-5 について、がん形質への関わりを研究してきた。その過程で、HIC-5 ががん細胞の転移を抑制的に制御していること、そして、その機序がMMP-9 の発現の特異的な抑制によること、さらにその抑制がNADPH oxidase (NOX4) の発現抑制によることを見出した。 本研究では、HIC-5が抑制的に働きかける「NOX4 由来ROS によるMMP-9 誘導機構」を解析し、がん転移抑制につながる新奇創薬シーズを提案することを目的としている。今年度は、以下の点を明らかにした。 1) NOX4 を過剰発現/ノックダウン、或いはROS消去剤等により細胞内レドックス状態を変化させたところ、MMP-9 の発現が促進/抑制された。また、細胞内レドックス変化の標的は、MMP-9の転写活性ではなく、MMP-9 mRNAの安定化であった。 2) ROS指示薬、ROS消去剤等を用いて、NOX4 の発現量を制御した細胞のレドックス状態を測定したところ、NOX4 を過剰発現/ノックダウンによりミトコンドリアO2-量が増加/減少していた。また、ミトコンドリア局在性ROS消去剤によりMMP-9 mRNAは減少した。 3) 本機構の一般性や転移能との関連性を比較検討したところ、rasに変異を有するがん細胞株でNOX4 由来ROS依存性MMP-9発現誘導が観察される傾向があった。活性化rasを用いて人為的にがん化させたヒト乳がんモデル細胞株での挙動を調べたところ、NOX4依存的にMMP-9発現を制御されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NOX4の過剰発現/ノックダウン、および細胞内レドックス状態変化によるMMP-9発現への影響を検討し、NOX4由来ROSがMMP-9 mRNAの安定化することを見出した。当初の計画で想定していた転写レベルでの影響ではなかったが、細胞内レドックス変化の標的を見出せた。 また、転移能の異なる細胞株、およびモデルがん化細胞株を用いて、HIC-5が抑制的に働きかける「NOX4 由来ROS によるMMP-9 誘導機構」とがん化シグナルとの関連性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
がん化シグナルとの関連性を示すことができたが、がん抑制遺伝子との関連性についても検討したい。また、NOX4によるMMP-9 誘導機構の実態を解明するため、ROS 感受性となる分子的変化(標的因子内のアミノ酸修飾等)を調べる予定である。がん細胞内のROS感受性MMP-9 誘導機構を阻止する手段を準備し、最終的な転移を抑制できるか検証するために、当該機能に対する人為的に破壊、またはROS感受性を失わせる可能性を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、試薬等の購入が予定より少なかったことがあげられる。また、初年度ということもあり、研究成果が学会発表や雑誌投稿の水準にまでは達しなかったため、旅費および人件費が発生しなかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、①研究を遂行するための試薬購入費 (物品費)、②学会発表のための旅費、および③研究発表のため投稿にかかる費用 (人件費) として使用することを計画している。
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