2015 Fiscal Year Research-status Report
20番染色体長腕上の骨髄異形成症候群疾患関連遺伝子の同定と分子機構の解明
Project/Area Number |
15K08320
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
志関 雅幸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (90260314)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / 20番染色体 / NCOA3遺伝子 / PTPN1遺伝子 / PLCG1遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、次世代シークエンサーを用いた以前の解析で骨髄異形成症候群症例で変異が認められたNCOA3遺伝子についてより多数の臨床検体を用いて、変異解析を行いその頻度や臨床病態との関連について検討した。対象とした約400症例のうち、骨髄検体より高分子DNAが抽出可能でありかつ臨床データに欠落の無い125症例について変異の有無を検索した。しかし、予想に反して変異は6例に見つかったのみであった。うちアミノ酸置換を認めたのは1例のみであった。 2、以前の検討で発現低下が見られたPTPN1遺伝子とPLCG1遺伝子の発現をRQ-PCRで、20番染色体の異常を持たない症例を含む骨髄異形成症候群125症例で検討し臨床的意議を確認した。PLCG1の発現レベルは、骨髄異形成症候群のうち高リスク群(RAEB-1,RAEB-2)症例で低リスク群(RARS, RCMD, RCUD)症例と比べて有意に低下が見られた。さらに発現レベルと生存期間に相関を認め、特に発現レベルの低い25%の症例はそれ以外の症例と比べて有意に5年全生存率が低かった(29.7%対63.2%)。一方PTPN1も同様に高リスク群での有意な発現レベルの低下が見られた。以上の結果から、PLCG1およびPTPN1遺伝子発現レベルの低下が骨髄異形成症候群の発症ならびに進展に関与する可能性が示唆された。また、一部の症例ではウエスタンブロット法によるタンパク発現を検索し、同様に低下が見られることを示した 3、PTPN1およびPLCG1遺伝子の発現低下とmyeloid cellの分化、増殖との関連を調べるため、両遺伝子についてテトラサイクリンによる誘導可能な発現ベクターを構築した。K562細胞へ導入し、一過性発現系で発現が誘導されることを示し、細胞増殖の低下、分化誘導が起こることを示した。さらに、安定発現株を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、NCOA3については予想より変異の頻度が低く、また発現低下と臨床病態との関連も見られなかった。 2、一方、PTPN1およびPLCG1に関してはその発現低下と疾患の進行、さらに生存率の低下が示された 3、1.2の結果より当初NCOA3の機能解析をまず行う予定であったが、後回しにして、まずPTPN1遺伝子とPLCG1遺伝子について機能解析(骨髄系細胞における増殖、分化との関連)を行う方針として、誘導可能な強制発現系の樹立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
PTPN1およびPLCG1の強制発現系を用いて分化増殖との関連をまず細胞生物学的に解析し、その結果を基に、分子生物学的なメカニズムの解明につなげる。一過性発現系を用いた実験ではすでにPTPN1の過剰発現はK562細胞の増殖を落とし、分化に向かわせるデータを得ている。安定発現株を用いてより詳細な検討を行う予定である。 NCOA3に関する機能解析は後に回す予定である
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Causes of Carryover |
本来予定していたNCOA3遺伝子発現ベクター構築を後回しにし、より本研究において 重要な意義を持つことが研究成果で明らかになったPTPN1遺伝子とPLCG1遺伝子についての発現ベクターを構築することとした。NCOA3遺伝子の発現ベクターについては当初変異体も作成することを計画しており、それに伴う標的となる変異体作成のため試薬、キットを購入予定であった。一方PTPN1とPLCG1については変異が見つかっておらず、発現低下のみが見られているため、野生型遺伝子の導入を先行しておこなった。そのため、必要となる試薬代などで差額が生まれ繰り越し金ができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金部分は、次年度(平成28年度)、NCOA3遺伝子の標的となる変異体作成のための試薬等の購入費に充当する予定である。
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