2016 Fiscal Year Research-status Report
20番染色体長腕上の骨髄異形成症候群疾患関連遺伝子の同定と分子機構の解明
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15K08320
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
志関 雅幸 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (90260314)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / 染色体欠失 / 20番染色体 / PLCG1遺伝子 / PTPN1遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究成果からでMDS症例で有意な発現低下があり、かつ臨床症例の予後との相関が認められた20番染色体長腕上の共通欠失領域に存在する2つの遺伝子(PLCG1遺伝子およびPTPN1遺伝子)に関して、本年度は以下のような解析を進めた。 1、20番染色体長腕欠失を伴わないMDS症例においても両遺伝子発現の低下が認められたため、そのメカニズムの解明を試みた。プロモーター領域のメチル化をメチル化特異的PCRを用いて解析したところ、発現低下を認める症例では正常と比べて有意にメチル化を生じていることが明らかになった。さらに発現低下が認められている臨床サンプルを用いて、MDSの治療薬でもある脱メチル化薬(5-azacytidinr)による処理の効果を検討したところ、MDS症例においてはこれら二つの遺伝子の発現が誘導されることが示された。これらの結果からプロモーター領域のメチル化と遺伝子発現低下との関連が示唆された。 2、骨髄系腫瘍の細胞株K562を脱メチル化薬による処理を行うと、赤血球系への分化を認めるが、この際にPTPN1およびPLCG1の発現誘導が認められた。さらにPTPN1阻害薬を併用すると分化誘導効果が打ち消されることがわかった。このことからPTPN1の骨髄系細胞の分化における役割が示唆された。 3、K562細胞株におけるPTPN1の過剰発現の影響を検討した。過剰発現により、細胞増殖の低下、分化傾向が観察された。さらに分化マーカー(特に赤芽球系)の誘導がもたらされることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PTPN1ならびにPLCG1遺伝子発現低下は20番染色体長腕欠失症例のみならずMDS全般の分子病態に関与する可能性が示された。発現低下のメカニズムとして、染色体欠失以外にプロモーター領域のメチル化の関与が明らかにされ、さらにMDSの治療薬として用いられている脱メチル化薬5-azacytidineによりこの二つの遺伝子の誘導が臨床検体で認められることが示され、MDS治療の標的となる可能性も出てきた。さらにPTPN1に関しては骨髄系細胞の分化との関連が示された。 以上より、当初と比べて解析の標的とする遺伝子の変更はあったものの、MDSの分子病態の解明という点ではかなり進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PTPN1, PLCG1発現低下が、MDSにおいてどのような細胞内経路の異常をもたらし病態に関与しているのか、特に赤芽球系と巨核球系の分化経路に注目して詳細に解析して行こうと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画に明らかな遅れはないものの、消耗品(細胞培養用フラスコ、ピペット、細胞培養液など)に関して、実験に影響のない範囲でより安価なものに切り替えたり、有効な利用を行ったところ、予定よりも少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は現在解析している二つの遺伝子に関して、その意義が予想しているより大きいと考えるため、特に生化学的、分子生物学的意義について、当初の計画より、詳細に行おうと考えている。そのために必要な試薬などへの購入にあてる。
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