2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝的脳卒中モデルラットの血液脳関門は脆弱かーインビトロ再構築技術を用いた検討
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15K08321
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山形 一雄 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10299323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
並河 徹 島根大学, 医学部, 教授 (50180534)
中川 慎介 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (10404211)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | BBB / SHRSP / アストロサイト / ペリサイト / 内皮細胞 / タイトジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の検討によりWKY, SHR, SHRSP由来の内皮細胞の単層培養系での比較では大差がないことが判明したため、BBB構成細胞であるアストロサイトと ペリサイトをWKYとSHRSPより単離培養し、共培養系を作製した。経内皮電気抵抗によるバリアー機能評価の結果、SHRSP由来のアストロサイトはWKY由来のアストロサイトに比べ、バリアー機能の強化作用が弱いことが判明した。一方、SHRSP由来のペリサイトとWKY由来のペリサイトとの共培養系の比較では、大差がみられなかった。アストロサイトとペリサイト、内皮細胞の3種細胞共培養系では、WKY由来のモデルがSHRSP由来のモデルよりも有意にバリアー機能が高いことが判明した。この時、アストロサイトと内皮細胞の共培養時よりも、そこにペリサイトが存在するとBBB機能の増強作用が高まることが判明した。 同様に前年度の検討から、アストロサイトから産生されるBBB形成に関わる複数の遺伝子発現を検討し脳浮腫を誘導するとされるアルギニンバゾプレッシン(AVP)の添加での複数の遺伝子発現変化を示した。そこで、平成28年度では、AVP刺激で脳浮腫に関係するアクアポリン4(AQP4)などの遺伝子発現を検討した。PCR法を用いた遺伝子発現の解析からAVP刺激時でWKYとコンジェニックラット由来アストロサイトで反応性アストロサイトのマーカー でGFAPの遺伝子発現が変化し系統間で違いが確認された。また、同時に実施したグルタミン酸刺激でAQP4とNa+/H 交換輸送体1(NHE-1)の遺伝子発現が、SHRSP由来アストロサイトで増加することを明らかにした。これら結果は、AVP刺激でBBBと炎症が同時に惹起される可能性を示し、脳卒中に関わる炎症がBBB形成を誘導することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BBB構成細胞の中で、アストロサイトがSHRSPのBBB機能不全に関係していることを示した。また、アストロサイトとペリサイト間のクロストークがBBB機能維持に重要であるとする知見を得た。一方、AVPおよびグルタミン酸の刺激でWKYとコンジェニックラット由来アストロサイトで異なる遺伝子発現パターンを有することが判明した。これら結果から、浮腫を伴う脳卒中刺激でタイトヤンクション形成と浮腫形成が同時に誘発される可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様の評価を継続する。経内皮電気抵抗だけでなく、BBB機能にかかわる分子(タイトジャンクションタンパク質やトランスポーターなど)の変動の詳細を検討する。加えて、研究分担者の並河らは、SHRSPの第1、18染色体にその脳卒中感受性の大部分を説明する量的形質遺伝子座(QTL)が存在することを明らかにしている(Gandolgor et al. Hypertension 2013;62:55-61)。また、遺伝子発現マイクロアレイ解析により、SHRSPと脳卒中抵抗性であるSHRの脳組織で有意な発現差を示す遺伝子を同定している(未発表)。脳卒中感受性QTLに存在する発現変動遺伝子はSHRSPの脳卒中感受性に影響することが想定される候補遺伝子であり、今後はこれらの遺伝子をターゲットするsiRNAノックダウンや過剰発現系をハイブリッドBBBモデルに組み込みことで、BBB機能不全を惹起する分子機序を詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
AVPやグルタミン酸の作用機構を明らかにするため、シグナル伝達等阻害剤による実験を予定していたが細胞の増殖が当初予定したより落ち少し遅れたため、こられに関する試薬の購入がずれ込んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
複数のシグナル伝達阻害剤や受容体アンタゴニストを使用しAVPやグルタミン酸の作用機構を細胞レベルで明らかにする。その為、シグナル伝達阻害剤や受容体アンタゴニストおよび遺伝子やタンパク質の解析に関する消耗品を購入予定。
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Research Products
(14 results)