2015 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素および硫黄酸化物産生不全モデル・硫黄転移酵素ノックアウトマウスの病態代謝
Project/Area Number |
15K08322
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
永原 則之 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10208043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
伊藤 隆明 熊本大学, その他の研究科, 教授 (70168392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 硫黄転移酵素 / ノックアウトマウス / 硫化水素 / ポリスルフィド / 一酸化硫黄 / 不安様行動異常 / セロトニンレセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ノックアウトマウスの繁殖・飼育・系統維持:本学の動物管理室・秋元および薬理学分野・永野ならびに三ヶ原と協力して実施した。また現在、 国立精神神経医療センター研究所、明治薬科大学、アテネ大学(ギリシャ)、マックスプランク研究所(ドイツ)、LSH健康科学センター(アメリカ)にノックアウトマウスを供与して共同研究を進めている。MSTの未知の生理的作用が解明しつつある(未発表)。 2)生理および病理形態的ならびに分子病理学的研究:熊本大学・医学部・病理学講座・伊藤と協力して実施した。ノックアウトマウスおよびコントロールの胎児期、周産期、成体における3-mercatopyruvate sulfurtransferase (MST)の発現の推移を、免疫組織化学的分析を行い、新たなMSTの局在と発現パターンを見出した。現在、学会および論文発表の準備を行っている。 3)行動学的および分子薬理学的研究:本学の薬理学分野・永野ならびに三ヶ原と協力して実施した。薬理分野の動物施設でヘテロ・ノックアウトマウスの繁殖、飼育および系統維持を行い、さらに交配によりホモ・マウスを作成している。同腹コントロールマウスを用いて、以前に行った行動学実験(Nagahara et al., Sci Rep, 2013)の再現性を確認する準備は完了した。 4)医化学的および物理化学的研究:永原が実施した。「MSTがポリスルフィドを産生する」ことを共同研究者(本科研費外研究)が証明した(Kimura et al., Sci Rep, 2015)。 以上の進歩状況を国際学会(14th International Congress on Amino Acids, Peptides and Proteins)のシンポジウムおよび国内学会(第88回日本生化学会大会)のワークショップでその一部を公表した。また、2報の総説(Suwanai and Nagahara, Cell Mol Med; Suwanai et al., Adv Tech Biol Med)で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスの繁殖・飼育・系統維持は目標を超えて実施されている。国内外で複数の共同研究をもk的にマウスを提供し、各研究施設において繁殖・系統維持を行っている。また、MSTの発現を免疫組織化学的分析で新たなMSTの局在を見出した。MSTの生理作用を示唆する予想外の結果であったが、今後はこの事実に対して詳細な研究を展開する。過去の研究で不安様行動異常が認められたが、この症状を同腹のコントロールマウスを用いて再現性を確かめる必要があった。当初、ヘテロのノックアウトマウスの繁殖に問題があった(Nagahara et al., Sci Rep, 2013)が、克服したため、同腹のコントロールマウスを得られるようになった。従って再現実験を行う準備が整った。 また、MSTがポリスルフィドを産生することが証明されたため、MSTの生理作用が更に複雑になった。MSTに関する研究の必要性が増つにつれ、本ノックアウトマウスを用いる研究が重要になってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ノックアウトマウスの繁殖・飼育・系統維持(秋元と協力):27年度に引き続き、業者と学内で必要な匹数を揃え、加齢と寿命に関する研究等を行う。また、行動学的研究で使用する同マウスは本学・薬理分野で、また、MSTの生理作用に関する共同研究を行っている国内外の研究施設においてマウスの繁殖・飼育・系統維持を行う。 2) ノックアウトマウスの生理および病理形態的ならびに分子病理学的研究(伊藤と協力):基本的には27年度の研究を継続する。新たなMSTの局在と発現パターンおよびある系統に腫瘍のバイオマーカーになることを見出した。ノックアウトマウスをコントロールとして、免疫組織化学的分析およびメタボロミクス解析を行い確認する。また、細胞内のポリスルフィドの蛍光分析を試みる。 3) ノックアウトマウスの(精神)行動学的および分子薬理学的研究(永野と三ヶ原と協力):基本的には27年度の研究を継続し、確認する。また、『不安様異常行動とセロトニンA2レセプター数の増加』の分子機構を明らかにする。マウス脳のレセプターのマスイメージングを行い、セロトニンレセプターの発現異常を視覚化する。 4) ノックアウトマウスの医化学的および物理化学的研究(永原およびポスドク):MALDI-TOF/MS用いてポリスルフィドの産生過程を明らかにする。また、マスイメージングを行い、コントロールマウスとノックアウトマウスにおける視覚化して比較する。組織内における微量硫黄酸化物、特に一酸化硫黄を直接定量する電極法を開発する。さらに、mercaptolactate cysteine disulfiduria (MCDU)モデルである本マウスにおいてメタボローム解析を行い、代謝産物を網羅的に精査する。分析には質量分析装置を用いる。以上、病態生化学的、病理的および分子薬理学的研究を統合してMCDUの病態とMSTの多様性(レドックス制御作用、硫化水素、ポリスルフィドおよび硫黄酸化物の生成)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
発注した物品の納品が遅れたため、今年度中の支払いができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に支払いを行う。
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