2016 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素および硫黄酸化物産生不全モデル・硫黄転移酵素ノックアウトマウスの病態代謝
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15K08322
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
永原 則之 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10208043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
伊藤 隆明 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70168392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 硫黄転移酵素 / ノックアウトマウス / 硫化水素 / ポリスルフィド / 一酸化硫黄 / 不安様行動異常 / 虚血性心疾患 / 内分泌組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 生理および病理形態的ならびに分子病理学的研究:熊本大学・医学部・病理学講座・伊藤と協力して実施した。メカプトピルビン酸硫黄硫黄転移酵素(MST)が内分泌分泌組織(細胞)に局在することを新たに発見した。以前に発表(Nagahara et al., Histochem Cell Biol 1998, 110)した免疫組織化学は凍結切片を用いたが、今回はホルマリン固定の組織に対して検索を行った。若干結果は異なるが、特に下垂体の中葉、副甲状腺、副腎の皮質においては束状層、膵臓のランゲルハンス島などに分布することが明らかになった。学会発表(日本生化学会)並びに論文発表(Tomita et al., Molecule, 2016, pii: E1707)を行った。 2. 行動学的および分子薬理学的研究:本学の薬理学分野・永野ならびに三ヶ原と協力して実施した。同腹仔の野生型を用いた行動実験を行ったが、再現性が良くなかったため、今後も再試を行う予定である。 3. 医化学的および物理化学的研究:永原が実施した。「MSTの中間体からポリスルフィドを産生する」ことを発見し、再現性を調べている。 4. 国外(ギリシャ)との共同研究でMSTノックアウトマウスに虚血性心疾患である梗塞病変が少ないことが分かった。すなわちMSTを欠落している方が、虚血性心疾患が起こりにくいことが分かった。この事実は国際学会(4th International Conference on the Biology of Hydrogen Sulfide, Naples - June 3-5, 2016)で発表し、論文を作成しているところである。 5.その他、国立精神神経医療センター研究所、明治薬科大学、島根医大、アテネ大学(ギリシャ)、マックスプランク研究所(ドイツ)、LSH健康科学センター(アメリカ)にノックアウトマウスを供与して共同研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動学実験は再現性を示すことはできなかったが、他の計画はほぼ予定通り進んでいる。結果は3報の論文、4回の国内学会、1回の国際学会、1回の招待講演(国際学会)で発表した。また、予想外な事柄として、内分泌組織におけるMSTの発現を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ノックアウトマウスの繁殖・飼育・系統維持(秋元と協力):28年度に引き続き、業者と学内で必要な匹数を揃え、加齢と寿命に関する研究等を行う。また、行動学的研究で使用する同マウスは本学・薬理分野で、また、MSTの生理作用に関する共同研究を行っている国内外の研究施設においてマウスの繁殖・飼育・系統維持を行う。 2) ノックアウトマウスの生理および病理形態的ならびに分子病理学的研究(伊藤と協力):基本的には28年度の研究を継続する。内分泌組織に新たなMSTの局在と発現パターンを発見したため、発生過程および腫瘍発生過程におけるMSTの役割を明らかにする。また、副腎系統に腫瘍のバイオマーカーになることを見出しているため、ノックアウトマウスをコントロールとして、免疫組織化学的分析およびメタボロミクス解析を行い確認する。 3) ノックアウトマウスの(精神)行動学的および分子薬理学的研究(永野と協力):基本的には28年度の研究を継続し、再現性を確認する。また、『不安様異常行動とセロトニンA2レセプター数の増加』の分子機構を明らかにする。マウス脳のレセプターのマスイメージングを行い、セロトニンレセプターの発現異常を視覚化する。 4) ノックアウトマウスの医化学的および物理化学的研究(永原およびポスドク):MALDI-TOF/MSおよびLC/MSを用いて、ポリスルフィドの産生過程を明らかにしたが、再現性を調べる。また、マスイメージングを行い、コントロールマウスとノックアウトマウスにおける視覚化して比較することを試みる。 5)MSTが欠損することで、虚血性心疾患の発症を抑えることが分かったが、そのメカニズムを国内外の研究者と協力して明らかにする。以上、病態生化学的、病理的および分子薬理学的研究を統合してMCDUの病態とMSTの多様性(レドックス制御作用、硫化水素、ポリスルフィドおよび硫黄酸化物の生成)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度中に支払いが間に合わなあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に支払い予定。
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