2016 Fiscal Year Research-status Report
BAP1変異がんにおけるDNA損傷・修復因子を中心としたがん増殖機構の解析
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15K08325
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
村上 優子 (渡並優子) 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 主任研究員 (70405174)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合成致死 / 悪性中皮腫 / DNA損傷修復 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、プール型レンチウィルスshRNAライブラリーを用い、悪性中皮腫の原因遺伝子の一つであるBAP1の変異に対して合成致死表現型を示す遺伝子をスクリーニングした。得られた候補遺伝子について、前年度に引き続き個別に候補遺伝子のノックダウン/阻害剤を用いて表現型の確認を行った。そのうち、DNA修復に関わる脱ユビキチン化酵素USP1がBAP1が変異している悪性中皮腫細胞株において細胞増殖の抑制効果が強かった。また、USP1の阻害剤であるML323を用いても同様の結果が得られた。そのため、USP1とBAP1の関係について分子機構の解析を進めることとした。 BAP1もUSP1も共に脱ユビキチン化酵素であるが、今までの報告では共通の標的の報告がないため、それぞれの標的として知られている分子について最初に検討した。BAP1変異を持つ悪性中皮腫細胞株はコントロール細胞株に比べ、USP1のノックダウンによって、1)UVによるDNA損傷を与えた際のPCNAのユビキチン化の状態に変化は見られないが、2)FANCD2のユビキチン化の状態には変化が見られるという予備的な結果が得られた。しかしながら、FANCD2自身のノックダウンではBAP1変異との合成致死表現型は確認できなかった。 また、複製阻害剤Hydroxyurea、ATM / ATR阻害剤VE821、CHK2キナーゼ阻害剤PV1019、オートファジー阻害剤クロロキン、HDAC阻害剤panobinostatなどでも同様にBAP1変異に対して合成致死表現型を示したため、分子機構の解析を引き続き進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、悪性中皮腫の原因遺伝子の一つBAP1と合成致死表現型を示す遺伝子のうち、DNA損傷修復に関わるUSP1に集中し解析を進めた。その結果、BAP1がFANCD2の脱ユビキチン化に関わっていることが示唆される予備的な結果が得られた。また、FANCD2自身のノックダウンではBAP1と合成致死表現型を示さないことが示唆された。 また、また、複製阻害剤Hydroxyurea、ATM / ATR阻害剤VE821、CHK2キナーゼ阻害剤PV1019、オートファジー阻害剤クロロキン、HDAC阻害剤panobinostatなどでも同様にBAP1変異に対して合成致死表現型を示すことが明らかとなった。 以上の進捗状況は申請書の計画通りにほぼ進行しているため、「おおむね順調に進行している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の進捗状況を受け、平成29年度は以下のように研究を推進していく予定である。 1) 平成28年度に引き続き、まだ個別の確認をしていない候補遺伝子について、BAP1変異と合成致死表現型を示すかどうかの確認を続ける。2) BAP1変異がある悪性中皮腫細胞株に、BAP1の種々の変異体を発現させ、BAP1の機能のうちどの部分がUSP1のノックダウンと合成致死表現型を示す原因になるのかを明らかにする。3) FANCD2のユビキチン化が変化している状態が合成致死表現型を示す原因になっているかどうかを検討するために、ユビキチン化ができないFANCD2を発現させてBAP1変異とUSP1ノックダウンによる合成致死表現型がレスキューできるかどうか検討する。4) 3)によりFANCD2のユビキチン化が合成致死表現型の原因になっていることが判明した場合、BAP1がFANCD2を脱ユビキチン化をすることができるかどうかについてin vitroでアッセイを行う。5)候補遺伝子群に関して、新規分子診断マーカーとしての有用性を検討するとともに、この遺伝子が治療標的となるかどうかin vitro、in vivo モデルを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
候補遺伝子のうちの幾つかが有望な表現型を示したため、本年度はその分子機構解明に時間を費やした。そのため、個別にノックダウンをして確認予定の他の候補遺伝子のshRNAプラスミド購入に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
候補遺伝子の解析を続けること、及び合成致死表現型を示す分子機構を解析するため、shRNAプラスミド、一般試薬、抗体、培地などの購入に用いる。また、情報収集及びディスカッションのため、幾つかの学会に参加予定であり、その参加費及び宿泊費に使用する。
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[Journal Article] SGO1 is involved in the DNA damage response in MYCN-amplified neuroblastoma cells.2016
Author(s)
Murakami-Tonami Y*, Ikeda H, Yamagishi R, Inayoshi M, Inagaki S, Kishida S, Komata Y, Koster J, Takeuchi I, Kondo Y, Maeda T, Sekido Y, Murakami H, Kadomatsu K*. (* corresponding authors)
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: -
Pages: 31615
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 共有結合型グルタチオン S- 転移酵素阻害剤の創薬研究2016
Author(s)
宍戸裕子,藤川遥加,木村康明,友池史明,桑田啓子,矢野貴人,福井健二, 関戸好孝,村上優子,周東智,阿部洋
Organizer
第34回メディシナルケミストリーシンポジウム
Place of Presentation
つくば国際会議場(茨城県つくば市)
Year and Date
2016-11-30 – 2016-12-02
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[Presentation] SGO1 is involved in the DNA damage response in MYCN-amplified neuroblastoma cells2016
Author(s)
Murakami-Tonami Y*, Ikeda H, Yamagishi R, Inayoshi M, Inagaki S, Kishida S, Komata Y, Koster J, Takeuchi I, Kondo Y, Maeda T, Sekido Y, Murakami H, Kadomatsu K*. (* corresponding authors)
Organizer
Gordon Research Conference, Genomic Instability
Place of Presentation
The Hong Kong University of Science and Technology (Hong Kong, China)
Year and Date
2016-07-24 – 2016-07-29
Int'l Joint Research
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