2016 Fiscal Year Research-status Report
均衡型相互転座モデルが解明する減数分裂の制御機構とそれに関わるエピゲノムの性差
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15K08334
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
堤 真紀子 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (30377907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 染色体転座 / 習慣流産 / 不妊 / 減数分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
均衡型相互転座の保因者は遺伝子の量に過不足が無いため、無症状であるが、不妊や習慣流産を呈する。これらの表現型には男女差がある。男性の場合、多くは無精子症あるいは乏精子症による不妊となる。一方、女性の場合は不妊ではなく習慣流産となる。この違いは精子や卵の形成過程における減数分裂の制御機構の性差に起因すると考えられているが、その実体は明らかにされていない。本研究では均衡型相互転座モデルマウスを用いて、これらの分子機構についてエピジェネティックな視点を取り入れた解析を行っている。均衡型相互転座を持つ場合の生殖細胞の形成過程を調べるため、染色体転座をホモに持つマウスと核型野生型マウスを交配し、均衡型相互転座染色体を持つモデルマウス(転座ヘテロマウス)を作製した。交配する核型野生型マウスの系統により、転座ヘテロマウスのオスの妊孕性に違いが見られ、完全不妊になる系統と産仔数が減少する系統が得られた。ヒトの場合、同じ切断点を持つ保因者の男性でも無精子症になる場合とそうならない場合があることが知られており、その違いが発生するオス特有のメカニズムを解明するのにこれらのモデルマウスが役立つと考えている。転座ヘテロマウスの精母細胞の染色体標本の解析を行ったところ、完全不妊になる系統ではそうでない系統より性染色体の遺伝子発現が認められる細胞が多く見られた。性染色体はエピジェネティックな修飾を受けて遺伝子発現が抑制されるがその制御異常が遺伝子発現を活性化し、結果として精母細胞の細胞死を引き起こし不妊になると考えられる。この制御異常は転座染色体の影響によることが示唆されており、性染色体と転座染色体との位置関係を解析しエピジェネティックな変化をもたらすメカニズムを明らかにしようと試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究に用いているマウスの繁殖状況が予定よりやや悪くデータを得るための十分な数を確保するのに時間が掛かっている。そのため、転座ヘテロマウスで精母細胞の細胞死が引き起こされるメカニズムを明らかにする実験は進まなかった。従って、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
転座ヘテロマウスの精母細胞について、chromosome confromation capture法とクロマチン免疫沈降法を組み合わせた次世代シーケンサーによる解析を行い、性染色体のエピジェネティックな異常がどのようにして発生するのかを明らかにする。また、メスの卵形成についても、第一減数分裂前期の転座染色体の挙動を解析し、雌雄の違いの発生原因の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
マウスの繁殖が予定通りにいかなかったため、組織を用いる実験で使用予定だった試薬の購入を見送っていたところ、予算に余りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、物品費として次世代シーケンサーによる解析費用(専用の試薬等)の一部に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)