2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAに着目したカロリ病+先天性肝線維症の新たな治療戦略
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15K08342
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 保則 金沢大学, 医学系, 講師 (30324073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人体病理学 / 肝臓 / 胆管細胞 / 肝線維嚢胞性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝内胆管の進行性の拡張を示すCaroli病の動物モデルであるpolycystic kidney(PCK)ラットを用い,胆管拡張の病態を特にマイクロRNAに着目して解析した.3年次計画の初年度(昨年度)は,PCKラットの培養胆管細胞においてmiR-125b-1-3qとmiR-125b-5pの発現低下があること,そしてPCKラット培養胆管細胞はSmoothened(Smo)を過剰に発現し,それに伴うSonic Hedgehog経路の活性化による細胞内シグナル伝達の亢進が胆管細胞の過剰な増殖に関与することを見出した.本年度の研究成果は以下のごとく要約される. 1.PCKラット培養胆管細胞にmiR-125b-1-3q mimicならびにmiR-125b-5p mimicをトランスフェクトした.miR-125b-1-3q mimicにより胆管細胞におけるSmoの発現は有意に低下したが,miR-125b-5p mimicはSmoの発現に影響を及ぼさなかった.また,miR-125b-1-3q mimicは胆管細胞の細胞増殖を有意に抑制したが,miR-125b-5b mimicに細胞増殖の抑制効果はなかった. 2.PCKラット培養胆管細胞へのmiR-125b-1-3q mimicのトランスフェクトによる細胞増殖の抑制効果は,Smo阻害剤であるcyclopamineを投与した場合とほぼ同等であった.PCKラット培養胆管細胞へのcyclopamineの投与はcyclin D1の発現を有意に抑制した.一方,アポトーシスの程度やp21の発現はcyclopamine投与により影響を受けなかった 3.PCKラットとCaroli病の肝組織切片を用いcyclin D1の発現を免疫組織化学的に検討した.PCKラットとCaroli病の肝内胆管細胞におけるcyclin D1の発現は正常肝より著明に亢進していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Caroli病の動物モデルであるPCKラットを用い,in vitroとin vivoで特にマイクロRNAに着目した検討を行うことで,Caroli病の新たな治療法を見出すことを当初の研究目的とした.本年度は,in vitroの検討でPCKラット胆管細胞におけるSmoの過剰発現にmiR-125b-1-3qの発現低下が直接的に関与し,それによるSonic Hedgehog経路の活性化が細胞増殖活性の亢進に関与していることを示した.さらに,PCKラット培養胆管細胞へのSmo阻害剤(cyclopamine)の投与は胆管細胞におけるcyclin D1の発現を有意に抑制し,また,PCKラットとCaroli病の肝組織切片を用いた検討で,胆管細胞でcyclin D1が過剰に発現していることが明らかとなった.これらの結果からCaroli病の治療において,cyclopamineの投与は胆管細胞の過剰な増殖とそれに起因する胆管拡張を抑制する有望な薬物療法となる可能性が示唆された.当初の予定はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
PCKラット培養胆管細胞へのmiR-125b-1-3q mimicのトランスフェクトおよびcyclopamineの投与は胆管細胞の細胞増殖を抑制した.Cyclopamineは胆管細胞のcyclin D1の発現を抑制したが,アポトーシスの程度やp21の発現に変化はなかった.今後はmiR-125b-1-3q mimicおよびcyclopamineによるPCKラット培養胆管細胞の細胞増殖の抑制機序を特に細胞老化とオートファジーの観点からより詳細に検討する.最終的にPCKラットにin vivoでcyclopamineもしくはmiR-125b-1-3q mimicの投与を行い,in vitroでの検討結果から期待される肝内胆管の拡張を抑制する効果があるかどうかを検討し,新たな治療法となり得るかどうかを明確にする.
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