2016 Fiscal Year Research-status Report
肝・胆道癌の発癌・進展における鉄代謝関連蛋白発現調節機構の病理学的解明
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15K08347
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
相島 慎一 佐賀大学, 医学部, 教授 (70346774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鉄代謝 / トランスフェリン受容体 / 活性酸素 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性肝炎、肝硬変においては、肝細胞およびクッパー細胞に鉄が過剰に蓄積することで、活性酸素が発生しひいては発がんに至ることが知られている。鉄は酸素と反応することで細胞傷害しやすい一方で電子伝達系どなどでのエネルギー産生や酸素運搬には必須の金属である。平成27年度は対象症例をリストアップした後、鉄染色で肝がん組織および非癌組織における鉄沈着の程度を検討した。 平成28年度は12症例の凍結標本の肝がん組織および非癌組織から、DNAを抽出しcDNAを作成した後、RT-PCRを用いてmRNA量を測定した。検討した鉄関連遺伝子はHepcidin, DMT-1, Ferroportin-1(FPN1), Transferin receptor-1/2である。非癌部に比べて癌部でmRNA量が明らかなに上昇していた症例は、Hepcidin(2/12例), DMT1(7/12例), FPN-1(7/12例), TFR-1(10/12例), TFR-2(4/12例)であった。 TFR-1が癌部発現亢進を示したため、93症例の肝切除標本について免疫染色にてタンパク発現を検討した。発現強度と発現%について評価したところ、高発現例を26/93例(28.0)に認め、高発現例は血管侵襲や肝内転移例で多く見られ、さらに血管侵襲部や肝内転移部でも多くの癌細胞が発現亢進をきたしていた。組織学的には、高発現例の多くが低分化型症例であった。TFR1-1は鉄を輸送する担体であるトランスフェリンの受容体であり、悪性度が高い癌細胞における鉄取り込み亢進機序を示唆する所見であった。 FPN-1も半数以上で癌部発現が高かったが、タンパク発現レベルでは明らかな差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定している臨床切除検体を用いた遺伝子発現解析は終了し、臨床病理データとの相関性の検討もほぼ終えている。現在、RNA量が癌部・非癌部で差が認められた遺伝子について、随時検討を行っているところである。今年中にはタンパク発現解析まで終了し、臨床検体での解析を終了できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞がんでの遺伝子およびタンパク発現の検討を早急に終了させ、肝内胆管癌での発現解析を行う。また、トランスフェリン受容体の下流に存在し、癌細胞の浸潤能・転移能に関連するタンパクを同定するところまで検索していく予定とする。
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Causes of Carryover |
研究室の引っ越しのため、使用しうる実験器具、実験設備が制限され、当該年度に予定していた実験試薬を購入することを控えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、研究室が元通りになり順調に物品を購入することができている。4月より購入予定にしている試薬類が大幅値上げになっているものがあるので、必要なものを慎重に選びながら実験を進めていく。
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