2016 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎発癌過程におけるマイクロRNAとシグナル伝達系活性化の関連性の解明
Project/Area Number |
15K08354
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
三富 弘之 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (90181940)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 炎症発癌 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
1.目的:潰瘍性大腸炎(UC)における炎症性発癌過程では,転写後レベルで標的遺伝子発現を制御するmicroRNA(miR)が炎症ストレスにより慢性的な機能阻害を引き起こすことが発癌に関与しているものと考えられるため,本研究ではUC発癌過程の各段階におけるmiR発現の差異と幾つかのシグナル伝達系活性化の変化を解析することを研究課題とした. 2.現時点までの実施研究計画内容:解析するUC関連異形成発癌症例は合計154サンプルで,対象として新たに通常型(散発性)浸潤癌(SP-CA)20サンプルを加えた.また,前年度解析後データの再検が必要と考えられた10サンプルも再検を終了したため,現時点で合計115サンプル(内訳:UC炎症大腸粘膜[INF]29,UC関連軽度異形成[LGD]24,UC関連高度異形成[HGD]18,UC関連浸潤癌[UC-CA]24,SP-CA 20)関してRNA を抽出し,real time PCR法でmiR20a,miR21,miR93,miR181b発現の比較解析を行った. 3.現時点までの研究成果:Real time PCRにより得られたデータは、正常大腸粘膜に対するそれぞれの値として2-ΔΔCtで表した.(1) miR21発現に関しては,INF(平均±標準誤差:7.12 ± 1.63; P <0.001),LGD(5.72 ± 0.98; P <0.001),HGD(4.80 ± 4.59; P <0.001),UC-CA(15.08 ± 7.34; P =0.002)はいずれもSP-CA (43.39 ± 13.07)より有意に低値であった. (2) miR20a,miR93,miR181bに関しては各病変間にほとんど差がなかった. 4.前年度の研究成果との相違点:前年度の研究成果では,miR20a発現がUC-CA,HGD,LGDではいずれもINFよりも有意に高値であったが,サンプル数を重ね再検も加えた結果,今回は有意差が出なかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
UC関連異形成発癌症例のmiR20a, miR21, miR93, miR181b発現の比較解析は,平成28年度までに全体の約2/3が終了しRNA抽出はすべて終了しているが,当初の研究計画に掲げたWnt/β-catenin及びRAS/RAF/MAPKシグナル伝達系の活性化の解析のための新たなDNA抽出がほとんど進んでいないため,研究計画の達成度はやや遅れているものと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.平成28年度でUC関連異形成発癌症例154サンプルの内,残りの約1/3のサンプルのmiR20a, miR21, miR93, miR181bの発現解析を行う予定である. 2.平成29年度にはUC関連異形成発癌症例のホルマリン固定・パラフィン包埋切片154サンプルからDNAを抽出し,Wnt/β-cateninシグナル伝達系関連遺伝子としてβ-catenin, APC,Axin,RAS/RAF/MAPKシグナル伝達系関連遺伝子としてBRAF,Krasの変異をdirect sequence法で検索する. 3.平成28-29年度に予定していた(1) 持続炎症発癌モデルにおけるmiR 20, 21, 93, 181b発現の解析, (2) 持続炎症発癌モデルにおけるmiRの機能変化の検証,(3) 炎症性発癌モデルに対するmiR機能調節薬剤による発癌抑制効果の検証についても研究費の余剰分を考慮しながら,できる限り進めてゆく.
|
Causes of Carryover |
当初の実験計画では平成28年度中に,UC関連異形成発癌症例の外科切除材料合計154サンプルすべてのmiR21, miR93, miR181b発現解析を終了する予定で研究費予定使用額を試算していたが,現在まで合計115サンプル(このうちSP-CA 20サンプルを新たに加えた)の解析が終了した状況で,UC関連異形成発癌症例のホルマリン固定・パラフィン包埋切片サンプルからのDNA抽出やWnt/β-cateninシグナル伝達系関連遺伝子解析が出来なかったため研究費残額が発生した.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は実験をスピードアップして研究費使用計画に沿って進めてゆく.UC関連異形成発癌症例の外科切除材料のホルマリン固定・パラフィン包埋サンプルからのDNA抽出のためのKit,primer作成費用,遺伝子変異の外部委託費用とそれらに関連した消耗品を購入するため,平成28年度の研究費残額の平成29年度への繰り越し金と平成29年度分の予算を合わせて,ほぼ全額を使用する予定である.
|