2016 Fiscal Year Research-status Report
Folliculin遺伝子異常と諸臓器腫瘍発生に関する分子病理学的研究
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15K08374
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中谷 行雄 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20137037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 充子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10361445)
矢澤 卓也 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50251054)
太田 聡 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90324342)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バートホッグデュベ症候群 / folliculin / 肺嚢胞 / 気胸 / 腎腫瘍 / 線維性毛包腫 / 甲状腺腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、本邦におけるBHD症候群の診療状況をとりまとめた。まず遺伝学的検査で確定した発端者120名と、BHD症候群関連疾患の既往がある血縁者計312名についての疫学集計を行った。FLCN変異は31の異なるパタ-ンからなり、最も多い変異はexon 11のpolyC 領域におけるcytosine挿入であった。その他にも欧米では殆ど見つかっていないexon 12の7塩基挿入やexon 13の4塩基欠失が日本人BHD家系のホットスポットであることが明らかになった。Exon 11のcytosine挿入は欧米人や中国人家系にも多いことから普遍的なホットスポットで、一方exon 12, 13の変異は日本における創始者効果を反映していると考えられた。日本人における312名のうち、気胸発症は230名(73.7%)と最も多く、肺CT検査を受けた患者家族156名において153名に同定可能な多発嚢胞がみつかり、他の3名は画像でとらえられない小嚢胞であった。腎腫瘍罹患率は全体では19.2%であったが、40歳以上の中高年層のみでは34.8%であった。これらの数字は欧米人データとほぼ同様であった。一方で皮膚症状は欧米人では9割以上に認められるが、日本人では半分程度にとどまり、殆どの場合は治療を要さない軽微な皮疹であった。病理学的には線維性毛包腫以外にも毛包周囲の脂肪腫やアクロコルドンなど複数の病変が認められた。特記すべきは気胸と腎癌の初発年齢はそれぞれ37.9歳、56歳と、10年の開きがあり、気胸時の肺病理診断を含めた診療時に本症例を疑い検査で確定することが、腎癌の早期発見早期治療に大きく貢献できることが示された点である。この結果を国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国の医療機関からは年間40件ほどの相談や解析依頼を受けており、うち検査同意を得て確定するBHD症候群患者は年間30名ほどである。2009年から本格的に開始した本研究は10年目を経過し、診断確定後の患者家族の病歴情報も集計が進んでいる。それらの中にはFLCN体細胞変異を証明した肺腫瘍や諸臓器腫瘍が含まれる。肺や甲状腺などの腫瘍発生頻度は腎腫瘍に比較すると低いが、外来診療を通じて諸臓器の画像情報などの集積を進めると、嚢胞形成や結節病変が少なからず発見される。手術が必要なケースは少ないものの、手術検体においてもミトコンドリアの豊富な嚢胞内結節の形成や、oncocytoma-like な細胞変化など、構造学的にも細胞学的にも散発性病変とは一線を画す病理学的特徴が示唆される。収集した検体を元に、これらの病変部に生じた変化の病理学的解析を進めている。特に解剖例における肺嚢胞の詳細な構造は、これまで末梢肺でしか捉えられなかった肺胞嚢胞の特徴所見に加え、嚢胞のルーツが細気管支血管を取り巻く線維性基質に深く根を下ろしている知見を得た。全国医療機関の協力を得て50症例以上のBHD症候群肺検体を集積しており、嚢胞発生の解剖学的部位や上皮間葉シグナルの詳細を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
BHD症候群において気胸発症頻度は欧米が2-3割であるのに対し日本人は7割以上と極だっている。肺嚢胞が気胸発症の母地になっていることは間違いないが、気胸発症機構の詳細は未だ明らかになっていない。気胸自体は生命予後に直接影響しないものの、反復性および家族性気胸はBHD症候群患者のQOLに著しく影響しており、病理学的に発症機構を解明し治療に応用することが今後の目標の一つである。不思議なことにBHD症候群モデル動物では気胸を呈さない。肺細胞特異的Flcnノックアウトマウスの肺では気腫性変化がみられるものの、その分布は患者とは異なり気胸も起こさない。下葉優位の嚢胞分布やbronchovascular bundleと胸膜に接しながら発育する嚢胞の病態解明には、物理的、環境的要因を含め更なる解明が必要である。また日本人患者において皮膚病変が不顕性であることは、欧米人患者の主訴となることが多い線維性毛包腫の予防や治療につながる可能性があり、皮膚科医と協力しながら病変部の集積と病理学的解析を計画している。腎腫瘍は50例程度が収集できたため、分担者の古屋や共同研究者の長嶋、黒田らが中心となって解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
1) H28年に受理された論文の掲載料請求が未だ出版社から届いていない。この掲載料を支払うため予想額相当を次年度に繰り越す。 2)3年間の研究成果を最終年度にまとめて出版することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1)請求が届き次第、支払い手続きを行う。 2)3年間の研究成果を最終年度にまとめて出版するための費用として使用。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Genetic, Epidemiologic and Clinicopathologic Studies of Japanese Asian Patients with Birt-Hogg-Dube syndrome; Syndrome.2016
Author(s)
Furuya M, Yao M, Tanaka R, Nagashima Y, Kuroda N, Hasumi H, Baba M, Matsushima J, Nomura F, Nakatani Y.
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Journal Title
Clin Genet
Volume: 90
Pages: 403ー412
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Establishment and Characterization of BHD-F59RSVT, an Immortalized Cell Line Derived from a Renal Cell Carcinoma in a Patient with Birt-Hogg-Dube syndrome Syndrome.2016
Author(s)
Furuya M, Hasumi H, Baba M, Tanaka R, Iribe Y, Onishi T, Nagashima Y, Nakatani Y, Isono Y, Yao M.
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Journal Title
Lab Invest
Volume: 97
Pages: 343-351
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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