2016 Fiscal Year Research-status Report
尿細胞診でのゲノム不安定性を指標とした低異型度尿路上皮癌新規診断マーカーの開発
Project/Area Number |
15K08380
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松田 勝也 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (20380967)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ゲノム不安定性 / 尿細胞診 / 尿路上皮腫瘍 / 新規鑑別診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
【対象】正常尿路上皮8例、乳頭腫8例、低異型度尿路上皮癌(LGUC)10例、高異型度尿路上皮癌(HGUC)8例の組織切片を対象とした。 【方法】53BP1とKi-67の蛍光二重免疫組織化学を行い,各症例での53BP1核内フォーカス(NF)発現パターンについて解析した。53BP1の発現パターンはNFが無いstable,NFが2個以下のLDDR、NFが3個以上のHDDR、核内にびまん性に発現するDiffuse type、1um以上の大型NFがみられるLFに分類し,それぞれKi67との共発現頻度について算出した。さらに、53BP1発現パターンとゲノム不安定性との関連性を検討するため、Fluorescence in situ hybridization(FISH法)による染色体異数性の解析を行った。FISH probeはUrovysion probe kit を用いて,CEP3,CEP7,9p21,CEP17の異数性を解析した。 【成績】HDDRの発現頻度は正常尿路上皮で19.3%、乳頭腫で33.1%であった。Diffuse typeの出現率は乳頭腫で0.2%たったが、LGUCでは19.9%と有意(P<0.0001)に高率であった。Ki67陽性細胞にDiffuse typeが共発現する細胞の頻度はLGUCで0.7%、HGUCで7.2%と有意(P=0.0056)に異なっていた。FISH法では、2種類以上の染色体異数性を有する例は正常尿路上皮と乳頭腫では認められなかったが、LGUCの50%、HGUCの全例で認められた。 【結論】尿路上皮での53BP1発現は尿路上皮細胞のゲノム不安定性のサロゲートマーカーとなる。さらに53BP1発現解析は尿路上皮腫瘍の異型度(悪性度)を示す、新規マーカーとなる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尿路上皮腫瘍組織での53BP1発現解析とゲノム不安定性解析は順調に解析できている。今後,尿細胞診試料を用いた解析を行い、尿細胞診診断技術の確立を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、侵襲性の低い尿細胞診試料を用いて、診断が難しい尿路上皮腫瘍に対する新規診断技術の確立と臨床応用を目的にしている。しかしこれまでの研究で、尿細胞診試料では53BP1発現解析が難しい例が少なくないことがわかってきた。これは尿中に浮遊し変性した細胞を対象としているためと思われる。現在、53BP1染色性の向上に向けて界面活性剤による透過処理を行う予定である。 さらにホルマリン固定パラフィン包埋組織から抽出した核酸を用いて、尿路上皮腫瘍の異型度とDNA損傷応答修復機構の関連性について分子遺伝学的に解析する予定である。
|