2016 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞腺腫の日本独自例の分子病理学的解明:WHO分類の進歩のために
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15K08388
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
近藤 福雄 帝京大学, 医学部, 教授 (80186858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝細胞腺腫 / 免疫組織化学 / 遺伝子変異 / 限局性結節性過形成 / 背景因子 / 肝内血流異常 / 腫瘍化 / 悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度以降の目標であった項目につき列挙する。 1) 免疫組織化学的に異常のあった例につき,遺伝子変異を検討したところ,予想どおりの結果となった。すなわち, H-HCA 12結節中5結節(42%)でHNF1alpha exon3-4領域内にアミノ酸置換型点突然変異(3結節), 欠失および挿入によるフレームシフト変異(2結節)がみられた。I-HCA 8結節中2結節(25%)でgp130 exon6領域内にin-frame deletionがみられた。β-catenin およびGS陽性12結節中5結節(42%)でβ-catenin exon3領域内にアミノ酸置換型点突然変異がみられた。*日本特有の亜型の意義については,現在検討中である。2) 上記のデータを血流異常に起因する非腫瘍性病変,限局性結節性過形成(FNH)のデータと比較する。 基本的にFNHの確定診断は免疫染色が異常でない症例なので,多くの症例は遺伝子異常の検索の対象とはならなかった。しかし,FNH内に肝細胞腺腫(HCA)や肝細胞癌(HCC)が存在する症例を経験し,HCA,HCC領域のいずれにも,β-cateninとTERTの遺伝子異常が発見された。本例はFNHが腫瘍化,悪性化を起こしうることの証明であり,かつ,国内,国外を問わず,第一例目のHCC in HCA in FNHという3層構造の病変で,現在投稿準備中である。 3) HCAやFNHの無治療観察は以前から継続中である。 4) 血流異常に起因する過形成結節の腫瘍化の可能性を示唆する症例は,2)のHCC in HCA in FNH症例の他,HCA in FNH例を数例経験している。さらにHCC in HCA例を経験し,英文症例報告した。5) HCAやFNHの様々な非定型例に関する個別化診断には,1-4)の知見が大いに役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載したように。平成28年以降の目標はおおむね達成されている。遺伝子解析の結果は,免疫組織化学的所見と良く合致している。遺伝子変異のパターンで日本独自のものがあるかについては,さらに検討の余地があるが,日本のHCAの背景因子は欧米で高頻度な経口避妊薬ではなく,肝内血流異常であることも判明した。また,HCAとFNHは,従来伝えられているような,組織所見の相違は乏しく,は非常に類似性があり,日本のHCAの特徴でもあることが推察された。 また,FNH内にHCAが出現する症例や,FNHからHCAをへてHCCに進展した症例も得ることができた。さらにHCAの癌化例も英文報告することができた。日本のHCAの成因や予後を考察する上で,非常に有意義な成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画である平成28年度以降の目標をこのまま継続する。 1)遺伝子変異の検索をさらに続ける。 2)日本のHCAの特徴として右記の2点が判明したので,これをまとめて英文論文として発表する。a)日本のHCAの背景因子として,肝内血流異常が最も高頻度であることが判明している。b)日本のHCAの組織所見は,FNHの組織所見と非常に類似性があり,日本のHCAの特徴でもあることが推察された。 3)FNHからHCAをへてHCCに進展した症例について,免疫組織化学的所見と遺伝子変異の所見もあわせて症例報告する(英文論文)。 4)以上の研究成果を国際的学会で発表する。
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Causes of Carryover |
本研究費取得前に購入済であった試薬類は十分に在庫があり,平成28年度の研究を遂行するのに有用であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,試薬使用量が平成27,28年度よりも増加することが見込まれるため,当初の予定どおりの平成29年度予算に加え,試薬使用量の増加を次年度使用額で補う予定である。 また,研究成果の論文化や国際学会発表をするため,英文校正料や旅費,学会経費の割合も増加する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Malignant Transformation of Hepatocellular Adenoma2017
Author(s)
Kwok WY, Hagiwara S, Nishida N, Watanabe T, Sakurai T, Ida H, Minami Y, Takita M, Minami T, Iwanishi M, Chishina H, Kono M, Ueshima K, Komeda Y, Arizumi T, Enoki E, Nakai T, Kumabe T, Nakashima O, Kondo F, Kudo M
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Journal Title
Oncology
Volume: 92 Suppl 1
Pages: 16-28
DOI
Peer Reviewed
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