2017 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞腺腫の日本独自例の分子病理学的解明:WHO分類の進歩のために
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15K08388
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
近藤 福雄 帝京大学, 医学部, 教授 (80186858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝細胞腺腫 / 免疫組織化学 / 遺伝子変異 / 日本独自 / 限局性結節性過形成 / 性差 / 背景因子 / 肝内血流異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで集積した肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma,HCA)や対照病変としての限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia,FNH)の検索結果から,日本での肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma,HCA)の特徴を明らかにすることができた。(1)HCAは,性差がほとんどない。(2)背景因子として経口避妊薬は少なく,肝内血流異常の方がはるかに多い。(3)肉眼的なFNHの特徴とされている中心瘢痕がHCAにもほぼ同頻度で存在する。(4)FNHの組織所見の特徴とされる異常門脈域がHCAにも存在する。(5)異型性が強いと欧米でいわれているβ-catenin活性化型HCAは日本の例では,異型が乏しい。これらの日本のHCAの特徴は従来の欧米からの報告とは非常に異なったもので,論文刊行や世界的学会で発表する価値が十分あると考えられる。 さらに,肝細胞癌(hepatocellular carcinoma,HCC)がHCAの結節内にみられる,HCC in HCA例,HCC in HCA in FNH例の存在は,FNH,HCA,HCCが連続的な多段階的増悪の各段階であり,その危険因子として肝内血流異常が関与している,という当初の我々の仮説に矛盾しない事実であった。そして,このHCC in HCA in FNH例では,切除後,残肝内に新たなFNHの発生がみられた。このことは,肝内血流異常→FNH→HCA→HCCという一連の病変の進展過程があり得ることを実証するものであった。 また,HCA結節内で,様々な多様な免疫組織化学的所見や遺伝子変異がみられた例を経験することができた。この事実は,HCA内の遺伝子変異は亜型の数よりさらに複雑であり,HCA結節内の病態は,慎重に詳細に調べる必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載したように,日本での多数のHCA症例を検索し,日本のHCAの特徴を5項目に渡って列挙することができた(性差,背景因子,肉眼所見,組織所見,β-catenin活性化型の組織所見など)。また,FNH,HCA,HCCという多段階的増悪が,肝内血流異常という因子を背景におこることが発見された。 これらは,日本のHCAの診断や治療をするうえで,非常に役立つ知見と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,これまで明らかになった日本のHCAの特徴について,英文論文化と国際学会発表を行う。 これまでに集積された,HCAとFNHの無治療自然経過例につきまとめる。 HCA結節内で多様な免疫組織化学的所見や遺伝子変異的所見を有する例につき,さらに症例を増加させて検討する。 フランスのグループから新たに報告のあったHCAの新亜型について,日本例についても,免疫組織化学的,分子生物学的に調べる。
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Causes of Carryover |
(理由) 免疫組織化学的試薬,遺伝子検索用試薬は,購入済のもので,かなりまかなうことができたためである。 (使用計画) さらに収集され,増加した症例に対し,免疫組織化学的検索や遺伝子検索を追加する必要があるので,試薬関連の支出は増加する予定である。また,研究成果の論文化や学会発表をおこなうため,英文校正料や旅費,学会経費の割合も増加する予定である。
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Research Products
(3 results)