2017 Fiscal Year Research-status Report

胃消化管間質腫瘍の亜型と悪性度の解明－非コードRNAからのアプローチ

Research Project

Project/Area Number	15K08390
Research Institution	Japanese Foundation for Cancer Research
Principal Investigator	高澤豊公益財団法人がん研究会, がん研究所病理部, 副部長 (50313151)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2019-03-31
Keywords	消化管間質腫瘍 / GIST / microRNA / 悪性度評価 / 分化
Outline of Annual Research Achievements	胃消化管間質腫瘍 (Gastrointestinal stromal tumor : GIST) を非コードRNA発現の観点から、発生臓器間、および、低悪性度と高悪性度GIST間で比較することによって、その発生・由来および生物学的性質に迫ることを目的とする研究である。本年度は、前年度に引き続き２つのサブテーマについて実験、検討を行った。１．c-kit遺伝子、PDGFRA遺伝子、およびその他の遺伝子変異の解析：発生臓器（胃、小腸、直腸、食道、結腸、消化管外）、低悪性度および高悪性度、若年発症例などの症例を追加して検討した。前年度に引き続き、c-kitおよびPDGFRA遺伝子が野生型の症例は、BRAF、TP53、KRAS、NRASの遺伝子変異についても検索した。既知の遺伝子変異のない症例については更に免疫組織化学的にSDHBの発現について検索を行った。消化管外発生、高悪性度症例の中にはGISTのサブグループの可能性のある群が含まれていることを確認した。２．microRNA発現の網羅的解析：前年度、凍結検体とホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体のいずれを用いた検索でも、ほぼ同様のmicroRNAプロファイリングが得られることを確認したので、本年度は主にFFPE検体を用いて網羅解析を行った。症例数が増えたことで発生臓器間の比較が可能になった。microRNAの発現について、臓器間で有意な差は見いだすことはできていないが、クラスター分析では、胃、消化管外、それら以外、の３つのグループに分けられる傾向があった。また、低悪性度群および高悪性度群の比較では、各群で差のあるmicroRNAを同定したが、凍結検体を用いた検索とほぼ同様の結果であった。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 本年度は本研究で設定した２つの課題のうち、１つの課題では着実に研究を進めることができたが、もう１つの課題では進捗がやや遅れている。１．c-kit遺伝子、PDGFRA遺伝子、およびその他の遺伝子変異の解析：解析症例数を増やした。特に、c-kit遺伝子やPDGFRA遺伝子の変異を有さない症例の遺伝子変異解析が着実に進行した。その結果、消化管外発生、高悪性度症例の中にサブグループが存在する可能性が示唆された。２．microRNA発現の網羅的解析：FFPE検体を用いた検索を行うことで症例数は確実に増えたが、個々の症例で検体の質にばらつきがあり、追加実験等が増え、検索は予定よりやや遅れた。「発生臓器間の違い」と「悪性度による違い」のmicroRNA発現について、統計的に意義ある結論を導くためには更に症例数の追加が必要な状況である。
Strategy for Future Research Activity	過去３年間の研究をもとに、症例数を十分増やして、以下の課題を平行して進める。１．c-kit遺伝子、PDGFRA遺伝子、およびその他の遺伝子変異の解析：各遺伝子変異の解析を継続する。特に、消化管外発生、高悪性度症例の解析を優先して進める。２．非コードRNA発現の網羅的解析：microRNAに関しては主にFFPE検体を用いた検索を継続する。また、長鎖非コードRNAの検討を継続する。３．発生臓器、悪性度、遺伝子変異等に特徴的な非コードRNA発現プロファイルの同定：統計的手法を用いて、有意な発現上昇や低下が見られる非コードRNAの抽出し、その役割や機能を解析する。
Causes of Carryover	（理由）物品費：新鮮凍結検体やFFPE検体からDNAやRNAを抽出するためのキット、試薬、実験機器は、先行研究で使用していたものを一部使用したので、購入は最小限度になった。c-kit遺伝子、PDGFRA遺伝子、およびその他の遺伝子の変異解析のための試薬、プローブ、および非コードRNA発現の網羅的解析に用いたmicroarrayキットについても同様である。また、FFPE検体の症例数はほぼ予定通り増加したが、新鮮凍結検体のある症例が少数しか増えなかったことも理由の一つである。人件費：症例の抽出、実験は研究者本人および所属施設の実験助手が行い、本研究のために新たに実験助手を採用することはなかった。（使用計画）物品費：新鮮凍結検体やFFPE検体からDNAやRNAを抽出するためのキット、試薬、実験機器、遺伝子変異解析のための試薬、プローブ、および非コードRNA発現の網羅的解析に用いるmicroarrayキットは随時購入する。人件費：症例数が多くなり、データ整理のため助手を採用する予定である。