2016 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドシグナルによる樹状細胞の機能制御とがん・炎症性疾患の発症機序解明
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15K08416
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 秀光 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40360531)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 神経ペプチド / 神経ペプチド受容体 / サイトカイン産生 / 抗原提示能 / 抗原特異的T細胞 / 感染症 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス感染症、感染がんや難治性炎症性疾患の発症メカニズム解明と免疫担当細胞の機能制御による、これらの疾患治療法開発への応用は重要である。本研究では、神経ペプチドシグナルによる新たな免疫機能の制御法を確立するとともに、がんや炎症性疾患における作用機序の解明を行なった。マウス大腸がん細胞株を野生型マウスに移植する担がんモデルを作出し、神経ペプチド受容体NK2Rに対する阻害剤を投与することで、腫瘍形成に及ぼす神経ペプチドシグナルの影響を検討した。その結果、NK2R阻害剤の投与により、有意に腫瘍の形成が抑制することを見出した。そこでNK2Rを過剰発現させたがん細胞株を作出し、マウスに皮内移植した結果、特に移植後初期の段階で、コントロールがん細胞を移植したマウスに比べて、腫瘍の形成が早いことを確認した。またがん細胞をマウス脾臓内に投与し、肝臓に転移巣を形成させるマウス大腸がん肝転移モデルにおいて、NK2Rを過剰発現することで、転移巣形成が亢進することを確認した。一方、NK2R遺伝子をノックダウンしたがん細胞株を作出し、前述と同様に野生型マウスに皮内移植した結果、コントロールがん細胞を移植した群に比べて、腫瘍の形成が抑制されることを確認した。これらのNK2R過剰発現がん細胞株あるいはノックダウン細胞株を使用し、神経ペプチドシグナルと関連する標的制御因子を網羅的に解析した結果、腫瘍の増殖や悪性度と関連する遺伝子群を見出した。 以上の結果から、神経ペプチドシグナル伝達経路とその下流分子によるがんの進展や転移巣形成の制御機構の存在が認められたことから、今後、その詳細な作用メカニズムの解明を行なうとともに、実際のがん患者との関連について検証を行なうことで、神経ペプチドシグナルの制御あるいはその阻害による、新しいがん治療法の開発に繋がる科学的エビデンスが得られるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、これまでにヒト樹状細胞における神経ペプチド受容体NK1RおよびNK2Rの阻害あるいはノックダウンにより、サイトカイン産生能や抗原提示能が抑制されることを確認し、神経ペプチドシグナルを介した樹状細胞の新規機能制御メカニズムの存在と炎症応答や抗原特異的T細胞免疫の賦活に重要であることを見出している。また肝がんや子宮頸がんの患者の病変組織における神経ペプチド受容体の発現について、免疫組織化学染色により解析し、NK1RおよびNK2Rが、炎症組織、腫瘍組織あるいは浸潤している免疫細胞に発現していることを明らかにした。さらに、ヒト樹状細胞におけるNK2Rを介した神経ペプチドシグナルの下流標的分子群について、候補分子のsiRNAを用いたノックダウン法により検証し、ヒト樹状細胞の機能制御に関することも確認した。 さらに本年度において、マウス大腸がん細胞株を野生型マウスに移植する担がんモデルを作出し、神経ペプチド受容体NK2Rに対するアンタゴニストを投与する治療モデル、およびNK2R遺伝子の過剰発現およびノックダウン細胞株を使用し、腫瘍形成に及ぼす神経ペプチドシグナルの影響を検討したところ、NK2Rを介した神経ペプチドシグナル伝達経路とその下流分子によるがんの進展や転移巣の系形成の制御機構の存在を示唆した。 従って、引き続き、神経ペプチドシグナルカスケードの関連分子や下流標的分子薬剤などを用い、その治療効果を確認することで、がん疾患において、神経ペプチドシグナルを標的した新しい治療法の開発が期待される。本研究により、最終的にヒト臨床応用が見込まれる、非常に有望な成果・エビデンスが得られているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた研究成果を基軸に、引き続き、神経ペプチドシグナルカスケードを標的とした、慢性炎症性疾患やがん治療の有効性を証明する実験を行なう。具体的には、マウス大腸炎モデル、担がんモデル、大腸がん肝転移モデル、ヒトがん細胞および免疫細胞を使用したヒト化がん治療モデルマウスを作出し、今年度の研究で得られた神経ペプチド受容体の阻害剤、および各種ノックアウトマウスを活用して、神経ペプチドシグナルの炎症、免疫応答に対する作用効果を検証するとともに、各疾患マウスモデルの治療効果を確認する。 また担がん治療モデルマウスを使用し、一般的に標準治療として使用されている制がん剤、抗炎症薬、免疫制御剤の投与を行い、この過程で神経ペプチドシグナルによる樹状細胞の機能制御を介した炎症応答、免疫応答の詳細なメカニズムの解明を行うとともに、前述の神経ペプチドシグナル関連因子や下流分子を標的とする薬剤との併用治療を行なう。これらの研究成果をもとに、実際のがん患者および難治性炎症性疾患に対する治療において、より有効な最適化治療プロトコルを確立する。 さらに、ヒト臨床検体を蓄積し、神経ペプチドシグナル関連分子とがんや炎症性疾患の病態との相関関係を検証する。また、神経ペプチドシグナルの制御による治療効果が期待される患者を予測するバイオマーカーを探索・同定する。それらの結果をもとに、神経ペプチドシグナルを標的とした治療の有効性を検討することで、最終的に、より効果の高い新規治療の開発に繋ぐ、科学的エビデンスを蓄積する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 血清マイクロRNAによる抗腫瘍免疫応答の判定と個別化がん免疫治療への応用2016
Author(s)
北村 秀光, 大竹 淳矢, 寺田 聖, 項慧慧, 豊島雄二郎, 岡田尚樹, 木井修平, 大野 陽介, 本間重紀, 川村秀樹, 高橋典彦, 武冨紹信
Organizer
第8回 血液疾患免疫療法学会
Place of Presentation
北海道大学医学部学友会館「フラテ」(北海道・札幌市)
Year and Date
2016-09-03
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