2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08429
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高江洲 義一 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60403995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マクロファージ / 泡沫細胞 / 細胞死 / インフラマソーム / IL-1b / ネクロプトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化の発症・進展におけるTAB2/3の役割を明らかにするため、平成27年度は、主にin vitroの実験系を使って、泡沫細胞の形成やその細胞死制御機構の解明に取り組んだ。in vitroにおいて骨髄由来マクロファージ (BMDM) から泡沫細胞が形成される過程には、TAB2/3は必須ではないことが明らかとなった。一方、泡沫細胞の細胞死抑制にはTAB2が必須であり、TAB3は必要ないことがわかった。さらに、TAB2は泡沫細胞のネクロプトーシスを抑制することがわかった。この知見と過去の報告を併せて考えると、TAB2は動脈硬化巣において泡沫細胞のネクロプトーシスを抑制することで、炎症が起こるのを抑え、血栓が形成されにくい状態を維持する方向に働く可能性が示唆される。Tab2欠損泡沫細胞の細胞死がTAK1に依存するかどうかについては、実験上の問題に直面しているためまだ結論が出ていない。また、H28年度以降に計画していた、細菌感染応答におけるTAB2/3の役割について予備的検討を行ったところ、リポポリサッカライド (LPS) で刺激したマクロファージの細胞死とIL-1bの産生を、内在性TAB2が抑制することを新たに見いだした。この発見は、TAB2を標的として炎症を制御する新たな方法の開発に繋がる基盤的知見になると考えられる。今後、TAB2によるIL-1b産生抑制の詳細な分子メカニズムの解明にも力を入れて取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養骨髄由来マクロファージに酸化型LDL (oxLDL) を添加すると泡沫細胞が形成されるが、その過程にはTAB2/3は必須ではないことが明らかとなった。一方、oxLDL添加後の泡沫細胞の細胞死抑制にはTAB2が必須の役割を果たすことがわかった。興味深いことに、TAB2のホモログであるTAB3は泡沫細胞の細胞死抑制に必須ではないことがわかった。次に、Tab2欠損泡沫細胞の細胞死の種類を明らかにするため、各種阻害剤を用いた検討を行った結果、ネクロプトーシスの特異的阻害剤であるNecrostatin-1の添加によって、細胞死が完全にレスキューできた。したがって、TAB2はoxLDLによって誘導される泡沫細胞のネクロプトーシスを抑制することが明らかとなった。この細胞死がTAK1に依存するかどうかを調べるため、TAK1の特異的阻害剤5Z-7-oxo-zeaenolによって細胞死がレスキューされるかどうかを調べたが、5Z-7-oxo-zeaenol自体がBMDMに対して細胞死を誘導することが判明したため、今のところTab2欠損泡沫細胞の細胞死がTAK1に依存するかどうか結論を得られていない。今後、5Z-7-oxo-zeaenolの濃度や添加時間などの条件検討を行い改善を試みる。これまでに得た知見から、Tab2KO BMDMでは自己分泌されるTNFaによってネクロプトーシスが誘導されている可能性を考え、oxLDL添加後の培養上清をELISA法で調べた結果、TNFaは全く検出されなかった。また、マクロファージの細菌感染応答におけるTAB2/3の役割を解明するため、Tab2欠損BMDMをLPSで刺激して、細胞の生存率及びサイトカインの産生を調べたところ、刺激後16~24時間にかけてTab2欠損BMDMで細胞死が亢進し、LPS刺激のみで成熟型IL-1bを高産生することを新たに見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージにおけるIL-1bの産生制御は炎症反応の重要なステップであり、その制御機構の解明は現在世界的にも競争の激しい研究分野の一つである。細菌感染応答におけるTAB2の役割解明は、本研究課題のH28年度以降に計画していた部分であるが、その重要性等を考慮して、今後はこちらを優先的に進める。ここから得られる知見の多くは、泡沫細胞の細胞死制御機構の解明にも役立つと期待される。研究設備や試薬等は、これまで使用してきたものをそのまま利用できるため、研究を遂行する上で特に問題となる事項はない。
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Causes of Carryover |
研究の焦点を泡沫細胞の細胞死制御からマクロファージの細菌感染応答にシフトしたため、実験に用いる試薬の購入費用が当初計画よりも少なくなったこと、学会参加のための出張費用を他の研究費で処理したため、予算計上していた旅費を執行しなかったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、細胞培養試薬や生化学実験用試薬等の消耗品を購入するための物品費として使用する計画である。
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