2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08429
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高江洲 義一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (60403995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マクロファージ / LPS / インフラマソーム / IL-1b / サイトカイン / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で、リポポリサッカライド(LPS)で刺激したマクロファージの細胞死とIL-1bの産生を内在性TAB2が抑制することを見いだした。この発見は、TAB2を標的として炎症を制御する新たな方法の開発に繋がる基盤的知見となるほか、TAB2による泡沫細胞の細胞死制御機構の解明の糸口となることが期待される。そこで、平成28年度からは、LPSによるマクロファージの細胞死とIL-1bの産生制御におけるTAB2の役割に焦点を当ててその解明に取り組んだ。貪食細胞特異的Tab2欠損マウスから骨髄由来マクロファージを調製し、LPS刺激で誘導される炎症性サイトカイン (IL-1b, IL-6, TNFa) の量を測定した結果、野生型コントロールでは検出できないIL-1bの産生がTab2欠損マクロファージにおいて認められ、一方、IL-6とTNFaについては野生型とTab2欠損マクロファージで顕著な差は認められなかった。定量的PCR法を用いて、それぞれのサイトカインのRNA量を測定したところ、コントロールとTab2欠損マクロファージとの間で有意な差は認められなかった。そこで、インフラマソームの活性に差があるかどうかを調べるため、ウエスタンブロットでカスパーゼの活性化を検出した結果、Tab2欠損マクロファージではLPS単独刺激でCaspase-1とCaspase-8が活性化することが明らかとなった。TAB2と相同性の高いTAB3の役割も同様に調べたところ、TAB3は上記の細胞応答に全く関与しないこともわかった。以上のことから、TAB2は骨髄由来マクロファージにおいて、LPS刺激によるインフラマソームの活性化を常に抑制する役割を果たしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の焦点を泡沫細胞の細胞死制御からマクロファージの自然免疫応答にシフトした結果、TAB2が骨髄由来マクロファージにおいて、LPS刺激によるインフラマソームの活性化を常に抑制していることを明らかにできた。平成28年5月1日付けの異動のため、その後の研究の進展がやや遅れ気味ではあったが、TAB2による自然免疫応答制御の分子機構の解明に着実に近づいており、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後明らかにすべき点は、なぜTab2欠損マクロファージではLPS単独刺激でインフラマソームの活性化が起こるのか、Caspase-1とCaspase-8のどちらが(あるいは両方が)IL-1bの産生に寄与するのか、TAB2によるインフラマソームの常時抑制機構はLPS刺激に特異的なのか、ということである。これらの点を明らかにするため、各種阻害剤を用いた実験やインフラマソーム構成因子欠損マウスとTab2の二重欠損マウス由来のマクロファージを用いた実験を行う。実験に必要なマウスや試薬等は揃っており、研究を遂行する上で特に問題となる事項はない。
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Causes of Carryover |
研究の焦点を泡沫細胞の細胞死制御からマクロファージの細菌感染応答にシフトしたため、実験に用いる試薬の購入費用が当初計画よりも少なくなったこと、学内異動に伴い一部マウスの飼育施設が変わり飼育費用が当初計画より低く抑えられたことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、細胞培養試薬、生化学実験用試薬等の消耗品を購入するための物品費として使用する計画である。
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