2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K08431
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
邊見 弘明 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 准教授 (20451924)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 免疫応答 / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原提示細胞である樹状細胞は、生体内で様々な組織に広く分布している。特に、皮膚や肺、腸管などの末梢組織に存在する樹状細胞は、微生物の検知などにより活性化して所属リンパ節に移動し、そこでT細胞に微生物由来抗原を提示することにより、獲得免疫を活性化する。このような樹状細胞は、機能的特性を有する種々のサブセットから構成されており、本研究計画は、これら樹状細胞サブセットの機能的意義の解明を目指すものである。 ケモカイン受容体XCR1は、樹状細胞サブセットの中でも、取り込んだ抗原を細胞傷害性T細胞(CD8 T細胞)に提示してそれを活性化させる能力、つまり、クロスプレゼンテーション能が高い樹状細胞に特異的に発現している。この発現特異性を利用し、ジフテリア毒素(DT)の投与によりXCR1+樹状細胞を誘導的に欠失できる遺伝子改変マウス(XCR1-DTRvenusマウス)を用いて、その機能の解析を行ってきた。さらに、上記マウスを用いて、XCR1+樹状細胞がT細胞応答における経口免疫寛容の誘導にも関与している結果を得てきている。そこで、本年度は、B細胞応答に対する経口免疫寛容へのXCR1+樹状細胞の関与について検討を行った。野生型およびXCR1-DTRvenusマウスにDTの投与と共にPBSあるいはOVA(抗原)を経口投与し、その後、除去された樹状細胞の回復後に、各マウスにOVAを免疫して血液中の抗OVA抗体の抗体価を測定した。その結果、野生型マウスでは、PBSを経口投与した群に比べてOVAを経口投与したマウスにおいて、OVAに対する抗体価の減少が観察された。その一方で、XCR1-DTRvenusマウスマウスではこの減少が認められなかった。このことは、XCR1+樹状細胞が、B細胞応答、つまり、抗体産生に対する経口免疫寛容の誘導に重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で示した様に、B細胞応答における経口免疫寛容へのXCR1+樹状細胞の関与について検討を行った。その結果、経口免疫寛容誘導時にXCR1+樹状細胞を欠失させると抗体価の減弱が誘導されない、つまり、抗体産生に対する経口免疫寛容の誘導においてもXCR1+樹状細胞が重要な働きをしていることが示唆された。 これに加えて、以下のことについても検討を行った。XCR1+樹状細胞を恒常的に欠失しているXCR1-DTAマウスでは、上皮間リンパ球(intraepithelial lymphocytes, IEL)が有意に減少している。その原因の一つとして、腸管へのT細胞のhomingに重要な分子であるケモカイン受容体CCR9や接着分子α4β7インテグリンの発現の障害などが推測されるため、これら分子の発現について検討を行った。その結果、XCR1-DTAマウス由来腸管T細胞でのこれら分子の発現は、コントロールマウスでのそれと違いは認められなかった。また、腸管のT細胞について、Annexin Vと7-AADとの染色性を基にアポトーシスや細胞死について検討したところ、XCR-DTAマウスにてその亢進が認められた。このことから、XCR1+樹状細胞の恒常的欠損によるIELの減少は、homing receptorの発現が低下しているからではなく、細胞の生存が障害されていることが原因の一つとして考えられた。この結果は、論文(Ohta et al. Scientific Reports, 2016)の一部として報告した。 上記進捗状況から、おおむね計画通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き経口免疫寛容におけるXCR1+樹状細胞の機能について検討を行う。特に、T細胞が関与しているマウス個体レベルでの免疫応答の抑制にXCR1+樹状細胞が関与しているかどうか検討する。そのモデルの一つとして、遅延型アレルギーについて検討を行うことを考え、現在、実験系の確立を行っている。実験系が確立できれば、これを行う。さらに、このような経口免疫寛容には、制御性T細胞(Treg)が関与していると考えられている。現在までに、経口免疫寛容誘導時にXCR1+樹状細胞が存在しないと、末梢組織で誘導される抗原特異的なTregが減少しているという予備的知見を得ているので、この解析を進める。 さらに、現在、複数ある樹状細胞の内、XCR1+樹状細胞以外の樹状細胞については、誘導的あるいは恒常的に欠失できるマウスの作成を行っているが未だ作成に至っていない。これについても進め、XCR1+樹状細胞以外の樹状細胞サブセットについての機能的意義の解明を目指す。
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[Journal Article] Crucial roles of XCR1-expressing dendritic cells and the XCR1-XCL1 chemokine axis in intestinal immune homeostasis.2016
Author(s)
Ohta T, Sugiyama M, Hemmi H, Yamazaki C, Okura S, Sasaki I, Fukuda Y, Orimo T, Ishii KJ, Hoshino K, Ginhoux F, Kaisho T.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 162
Pages: 23505
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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