2016 Fiscal Year Research-status Report
生体成分組成の解析に基づくAAアミロイドーシス発症の分子基盤の解明
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15K08436
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 将史 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (40411904)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミロイドーシス / 血清アミロイドA / グリコサミノグリカン / ペプチドライゲーション |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイドーシスモデルマウスの臓器(肝臓)からアミロイド沈着および非沈着部位をレーザーマイクロダイセクション(LMD)によりそれぞれ回収し、グリコサミノグリカン(GAG)の組成解析を行った。その結果、非沈着部位と比較して、沈着部位においては硫酸化されていないGAGの割合が有意に低く、予想通りGAGの硫酸基含有量がAAアミロイドーシス発症を制御し得ることが示された。しかしながら、別個体を用いた解析では再現性が確認されず、作業工程の煩雑さを考慮し、解析を一旦中断することにした。それに代わり、現在、高硫酸化したGAGを認識する抗体を用いた組織染色を試みている。 また、AAアミロイドーシスの沈着部位には、血清アミロイドA(SAA、104残基)のN末端断片(主に76残基)が検出される。そこで、2つのペプチドブロックのライゲーション反応と脱硫反応の組み合わせによりSAA(1-76)ペプチドを化学合成し、線維形成を評価した。アミロイド線維に特異的に結合する蛍光色素(ThT)を用いた蛍光測定、円二色性(CD)や赤外吸収(IR)スペクトル測定による二次構造評価、顕微鏡観察などにより、線維形成能および線維形態を評価した。その結果、中性条件において、SAA(1-76)ペプチドにGAGを添加した場合、ThT蛍光強度の経時的な増加が認められた。このとき、CD測定からは典型的なβシート構造を示すスペクトルは得られなかったが、IR測定によりβシート構造の形成が明確に示され、原子間力顕微鏡で線維状の凝集体が観察された。この結果は、中性条件ではThT蛍光強度の増加やβシート構造の形成が認められなかった全長SAAの場合とは異なるものとなった。すなわち、SAA分子のC末端部分(77-104残基)の切断が、中性条件でのアミロイド線維の形成を促進する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臓器由来GAGの組成解析では再現性がとれずに苦労しているものの、臓器沈着するSAAペプチドのライゲーション反応による合成法を確立するなど全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。また、昨年度実施した研究成果の一部については、論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
AAアミロイドーシス発症の制御因子としてのGAGの関与については、上述のように、高硫酸化したGAGを認識する抗体を用いた組織染色により引き続き検討を行う。また、SAA(1-76)ペプチドを用いた線維形成評価では、AAアミロイドーシスの発症を司るSAAアイソフォームについても同様の評価を行い、AAアミロイドーシス発症の分子基盤の総合的な理解に向け、研究を加速させる。
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Research Products
(3 results)